伝えたい 広島の “伝統野菜” の魅力 料理研究家が本を出版

先日、出版された「土と人と種をつなぐ広島」という本です。料理研究家の 花井綾美 さんが、広島の伝統野菜を紹介したものです。その魅力は、おいしさという花井さん。食料への関心が高まる中、光を当てることになるのでしょうか?

花井綾美 さん (むすぶ広島 代表)
「もしかしたら食べるものがなくなるんじゃないかと。やっぱり応援もしていかないといけないと思うんですね」

先週末、広島市内の書店で開かれた発刊記念トークショーです。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、食料の多くを輸入に頼る自給率の低さが問題になる中、花井さんが訴えたのが、伝統野菜の応援です。

伝統野菜とは長年、その土地で作り続けられている野菜のこと。本の中で花井さんは、広島市の川内地区で130年の伝統を誇る広島菜を中心に東広島市の青ナス、三原市のサトイモなど、県内11の伝統野菜を紹介しています。

花井綾美 さん
「農家さんに取材したら『なぜ、手間がかかって、もうからないものを作るのか?』と聞いたら、『やっぱりおいしいから残していきたい』って」

その真髄が、農家自ら種を取る自家採種です。花井さんは、川内地区の農家を訪ね、広島菜の種を取る様子を取材しました。

どういう種を取るかは、それぞれの家によって違います。すべてはおいしい広島菜を作るためですが、相当な手間がかかります。宅地化の進展もあいまって、この50年間で川内の農地は5分の1以下に減りました。

話の中で、花井さんは、川内の若手農家を紹介しました。

花井綾美 さん
「広島菜の伝統をこのままじゃ消えてしまうと。そこで、『ぼくたちががんばって残していくよ』っていうのが、若手です」

イベントでは、農家の野菜販売も手伝いました。これも花井流の応援です。

花井綾美 さん
「楽しいです。おいしい野菜が食べられる風土を整えていくのが、わたしの生きがいなので」

そして、最大の支援がそれぞれの野菜をおいしく食べるメニューの紹介です。広島の著名な2人の料理人に家庭で簡単に作れるレシピを考えてもらいました。

トークショーでも川内の農家が作ったミニ広島菜を使って、韓国風のお好み焼きチジミを焼いて振る舞いました。参加者の反応はおおむね好評で、お代わりをする人が相次ぐほどでした。

花井綾美 さん
「やっぱり野菜の完結はおいしく料理して、口に入れるまでがね。それがフィニッシュですから」

本の出版は、伝統野菜の魅力を伝える1つのきっかけという花井さん、これからも講演と調理と試食をセットにした活動に取り組む考えです。

― 料理研究家の花井綾美さんの本には、各野菜の紹介ページに二次元バーコードがあって、スマホをかざすと動画も見ることができます。

― 今回、本の中で紹介している広島県内の伝統野菜は11種類。これは、ごく一部で、出荷しているものだけでも20~30種類あるとみられています。花井さんは「チャンスがあれば、ほかの伝統野菜についても取材して本にまとめたい」と話しています。

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