宝塚星組公演「1789」開幕 革命前夜の仏舞台 礼真琴主演「歌、踊り、演技」三拍子そろう真骨頂

対立する立場にありながらも、互いに引かれかれ合っていくロナン(右、礼真琴)とオランプ(舞空瞳)=宝塚市栄町1、宝塚大劇場(撮影・長嶺麻子)

 宝塚歌劇星組公演「1789-バスティーユの恋人たち-」が2日、兵庫県宝塚市栄町1、宝塚大劇場で開幕した。8年ぶりに宝塚で再演されるフレンチミュージカルで、トップ礼真琴(れい・まこと)が躍動。群舞のまとまりと迫力、力強いコーラスで観客を圧倒し、「歌、踊り、演技」と三拍子そろった星組の真骨頂を発揮した。

 「1789-」は2012年にフランスで初演、日本では15年に宝塚歌劇月組が初演し人気を博した。潤色・演出は小池修一郎。

 フランス革命前夜。農民のロナン(礼)は理不尽な理由で父を官憲に銃殺された怒りを胸に、パリで若き革命家たちと親交を深めていく。ベルサイユ宮殿では王妃マリー・アントワネット(有沙瞳=ありさ・ひとみ)や王弟のアルトワ伯爵(瀬央=せお=ゆりあ)らが民衆の不満をよそに華美な暮らしを続ける。そんな中、ロナンはアントワネットに仕えるオランプ(舞空瞳=まいそら・ひとみ)と出会い、反発し合いながらも次第にひかれ合っていく。

 革命家が集まるパレ・ロワイヤルの場面では銀橋も使い、民衆が激しく歌い踊った。民俗音楽風のリズムに手拍子を加えた群舞は、未来に夢を見る若者の熱い思いを体現していた。

 礼は怒りに燃える粗野な青年が、次第に生きることの意味を見いだしていくさまを丁寧に演じて見せた。途中、ロナンは仲間であるはずの裕福な革命家仲間と農民である自分の間の不平等に怒りをあらわにする。そこから和解にいたる心の機微。歌、踊りと確固たる実力を備える礼だが、芝居の表現力にも一層磨きがかかったようだ。

 それはオランプへの思いの変化にも見て取れる。ロナンとオランプが大聖堂で再会する場面では互いへの愛の芽生えを自覚しつつも、「俺たちは敵同士」と切なく歌いあげ、葛藤を巧みに表した。

 稽古中はフレンチロックの大曲の数々に「苦戦している」と明かしていた礼だが、難しいコード進行とリズムを自在に操り、努力の跡が大いに感じられた。

 2幕も冒頭からアクセル全開で、民衆が客席から登場し力強いコーラスを披露。一気に客席を舞台に引きつけた。軍と相対する場面では、さらに力強く地面を踏み、手で体をたたいて民衆の怒りは最高潮に。革命家デムーラン(暁千星=あかつき・ちせい)が「武器を取れ」と民衆を鼓舞し、革命へ加速度的に突き進んでいく。見る者の胸も高鳴らせる、圧巻の演出だった。

 瀬央演じるアルトワ伯爵の悪役ぶり、理想を胸に新しい時代の到来を信じる暁のデムーラン、極美慎(きわみ・しん)のロベスピエールと、礼を筆頭に、星組の、とてつもない熱量が結実した舞台だった。(小尾絵生)

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