バサジィ大分 バンディエラ仁部屋和弘がまれな存在である理由 【大分県】

バサジィ大分の「バンディエラ」仁部屋和弘が元気だ。5月28日の開幕戦にファーストセットとして出場し、逆転勝利の呼び水となる同点ゴールを決めた。「まだまだ自分自身もチームも本調子ではないが、開幕戦で2点差をひっくり返して勝てたことは大きい。次の試合につながる、いいスタートとなった」と笑顔を見せた。

仁部屋は、一度も移籍することなく大分一筋でプレーする、いわゆる「バンディエラ」だ。日本フットサル史の中でも、まれな存在。Fリーグが開幕した2006年に19歳という若さでデビューし、今年で17年目になる。これだけでもすごいが、仁部屋の場合はさらに特別。それは大分市出身の生粋の地元っ子であること。生まれ育った街のクラブでキャリアを積み、緩急をつけた変幻自在のドリブルで周囲を魅了すると、2008年にフットサル日本代表に初選出される。その後も着実にキャリアを積み重ね、大分だけでなく日本代表の「背番号10」を背負い、日本人トップ選手として走り続けた。

昨季は右膝前十字靭帯(じんたい)断裂と外側半月板損傷のリハビリに長い時間を要し、リーグ終盤の数試合の出場にとどまったが、仁部屋には焦りはなかった。「チームが残留を争っているときに力になれず申し訳ない気持ちはあったが、仲間を信じていたし、自分にできることに目を向けた」。黙々とリハビリに取り組み、チーム練習に合流すれば積極的に若い選手に声を掛け、自分の経験を伝えた。仁部屋の背中をずっと見ていた野口茅斗は「あれだけ実績のある選手が全く手を抜かずに練習し、練習前後も念入りにケアや補強している姿を見ると、まだまだ自分もやれることがあると思えた」と話す。

今季開幕戦でゴールを決めた

今季の仁部屋は個人調整でコンディションを整え、開幕1週間前に初めて実践練習に加わった。狩野新監督は「仕上がりが悪ければメンバー外を考えていたが、しっかりと開幕に合わせていた。今でも日本代表選手と同じレベルのフィジカルがある」と目を見張った。20代の若い選手が多い中で開幕戦に起用したのは、「若手が勢いに任せてプレーするだけでは決して勝てない。攻めあぐねるときもあれば、押し込まれっ放しのときもある。そうしたときにベテランというのは変化をつけて勝利に導いてくれる」との強い思いがあったからだ。

仁部屋自身も「話さずとも分かる」と言わんばかりに、コートに立てば監督の描くプランを遂行し、チームが苦しいときは周りを鼓舞した。全盛期のように、ドリブルで抜き去り一人で得点まで完結するようなプレーはないが、試合を俯瞰(ふかん)して、自分が持つオーラや経験値で試合をコントロールする術を知っている。開幕戦の同点弾から逆転するまでの間、ギアを切り替え「ここが勝負どころ」と背中でチームを引っ張った。試合後に「課題は多いが、勝つことで得るものがある」と汗を拭い、勝利をかみ締めた。Fリーグ通算200得点まで、あと2点。仁部屋和弘に新たな勲章が加わりそうだ。

今も「フットサルが楽しい」と語る仁部屋和弘

(柚野真也)

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