21年度は2億、22年度は4億円超…兵庫・加古川市ふるさと納税、大ヒットの裏にセミナーや相談会

セミナーを契機に考案した返礼品「牛タン1キロ」が大ヒットした神戸肉推進機構の新田大社長=加古川市別府町新野辺北町

 ふるさと納税返礼品事業を活用して製品を全国にPRし、販路拡大につなげてもらおうと、加古川商工会議所が登録事業者・製品の発掘に取り組んでいる。兵庫県加古川市や加古川観光協会と連携。事業者向けセミナーや個別相談会で事業参加を後押しし、人気返礼品も誕生しているという。(増井哲夫)

■「うちの商品はいけるのか」

 加古川市のふるさと納税は、2020年度に過去最高の約3億1700万円を記録。21年度は2億2200万円だったが、過去最多の返礼品数をそろえた22年度は初の4億円超えとなった。

 観光協会長も務める同商議所の大庫隆夫副会頭(65)の呼びかけで22年3月、新たな返礼品開発や事業者登録を支援する特別委員会が発足。寄付額アップとともに、会員企業が事業展開に役立ててほしいと、市の運用管理事業者やふるさと納税の総合ウェブサイト担当者らを呼び、セミナーを開くなどした。

 「うちの商品はいけるのか聞いてみたくてセミナーに参加した」と話すのは、オリジナルグッズ製作会社「わくわく」(同市加古川町粟津)の奥田久美(ひさみ)社長(56)だ。返礼品に考えていたのは、円形のきり箱の穴に抜けた歯を順に置いていく乳歯ケース。表面にはレーザーで名前や誕生日などを焼き付け、一点物に仕上げる。

 返礼品の条件に合うのかが心配だったが、セミナーなどを通じ、木箱は他所で作られていても、加古川で加工されていれば大丈夫だと分かった。個別相談では、サイト担当者から「乳歯ケースは一般的なネット販売でも人気なので反響があるはず」と背中を押され、事業者登録を決断した。12月に出品すると16件もの申し込みがあった。

■メキシコ産でも加古川で加工

 「想像以上に返礼品対象になる幅が広いし、加古川市の制度は事業者にとって使い勝手が良いので気軽に参加できる」といい、続々と出品していく予定だ。

 22年度の大ヒット返礼品となったのが、1万9千円の寄付で届く「牛タン1キロ」だ。肉料理「志方亭」(同市別府町新野辺北町)も営む肉の卸売会社「神戸肉推進機構」の新田大社長(30)が発案した。ふるさと納税には以前から参加していたが、ネット販売を強化しようと、新たな返礼品開発に乗り出した。

 セミナーを受け、強みである仕入れルートを生かし、インパクトのある品を狙おうと決めた。まねのできない価格と品質のバランスを考え、打ち出したのがメキシコ産牛タン1キロ。「加古川で加工しているならOK」との返事をもらい、昨秋から展開した。3カ月間で2500件、2.5トンというメガヒットになった。「返礼品という仕掛けを使い、ヒットを出せたことは自信になった。今後の展望も開けた」と話す。

 同商議所指導課は「加古川市のふるさと納税は配送料を市が負担するなどさまざまなメリットがあり、事業者が参加しやすい。これを契機に自社の競争力強化につなげてもらえれば」としている。

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