何げない1枚の訴える力感じ 「前衛」写真の精神

大辻の作品に見入る来館者=富山市の富山県美術館

  ●芸術を楽しんだ休日

 富山市中心部で開催中の富山新聞創刊100年記念の企画展「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容」(富山県美術館、富山新聞社、北國新聞社など主催)と、第78回県展(富山新聞社などでつくる実行委員会主催)は4日、開幕後、初の日曜を迎えた。両展の会場は、芸術を満喫する家族連れやカップル、美術ファンらでにぎわった。

 県美術館で行われている「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容」では、来館者が技巧を凝らさず誇張なしに撮影した「コンポラ写真」や、超現実主義と抽象主義の影響を受けた前衛的な作品を鑑賞し、何げない光景が訴える力や記録の重要性を感じ取った。

 会場には、富山市出身の詩人・美術評論家瀧口修造、作家の阿部展也、写真家の大辻清司と牛腸(ごちょう)茂雄の作品や資料を中心に約450点が並ぶ。瀧口が紹介した超現実主義思想から始まる4人のつながりなどに触れられる。

 写真の記録性を重視した瀧口は、故意に実在を加工する技巧的表現に偏重する傾向に警鐘を鳴らした。阿部も共鳴し、瀧口とともに前衛写真協会を設立して雑誌「フォトタイムス」で精力的な活動を展開した。

 2人の影響を受けて写真家を志した大辻のコーナーでは、筆や紙の職人の生活を追った作品などが並び、来館者が「なんでもない写真」に込められた作者の思いに考えを巡らせた。

 小学6年生の次男と訪れた公務員の河村拓樹さん(41)は「当時の雰囲気、においまで伝わるような写真が多く、知識がなくても楽しめた」と話した。

 企画展の前期は3~27日、後期は29日~7月17日で、前後期合わせて計約650点が並ぶ。観覧料は一般900円、大学生450円、高校生以下無料。

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