珪藻土の継承揺るがず 珠洲で七輪、れんが生産再開

修理した窯で焼き上がった珪藻土のれんがを確かめる鍵主社長=珠洲市蛸島町の鍵主工業

  ●市内2社、窯修復 「待ってくれる人のため」 奥能登地震1カ月

 最大震度6強の揺れで窯が壊れ、製造を中止していた珠洲市特産の珪藻土(けいそうど)七輪、れんがに生産再開のめどが立った。地震発生から5日で1カ月。ようやく窯の修復を終えた市内の2社はともに昨年6月の地震でも窯が崩れた。今回はより大きな被害となったが、「待ってくれるお客さんに迷惑はかけられん」と特産品を受け継ぐ決意は揺るがず。商品を全国に届け、元気な珠洲をアピールしたいと意気込んでいる。

 珠洲は珪藻土の埋蔵量が日本一とされ、切り出し技術は市無形民俗文化財に指定されている。

 蛸島町の鍵主工業では地震で窯の入り口上部のれんがが崩れた。昨年6月に別のれんがが落ちた際は2週間程度で積み直すことができたが、今回は1カ月近くかかったという。再建した窯に火を入れ、2日に生産再開後初となる珪藻土の耐熱れんがが完成した。

 鍵主哲社長は、焼き上がって出荷待ち状態だった商品が壊れた損失で1千万円、窯の修復に1千万円必要だったと声を落とす。

 一方で、再建に向かって動いたのは顧客からの激励があったから。耐熱れんがは鉄鋼メーカーの溶鉱炉、七輪は焼き肉店などで使われ、鍵主社長は「注文してくれた企業や店舗への影響を最小限にとどめたい」と修復作業を急いだとする。

 丸和工業は、正院町平床の本社工場と三崎町杉山の杉山工場にある計2基の窯が壊れた。本社工場は建物の傷みも激しいため、窯のみがダメージを受けた杉山工場を優先して修理し、3日に工事が完了した。数日中に火を入れ、七輪やコンロの製造を再開する。

 本社工場の窯は今年3月に再建して生産を始めたばかりで、復旧の見通しは立っていない。それでも、杉山工場の窯はれんがを積み増して、屋根の部分に金網とセメントを置いて地震で崩れにくいよう強度を上げるなど、揺れが続く地でも製造を続けられるように手を加えた。

 相次ぐ被害に玉置仁一社長は「1年で2度も被害に遭ってがっくりきた。だが、『がんばってください』とのメッセージ付きの注文もあり、これからも作り続けようと決めた」と話した。

窯の復旧を喜ぶ玉置社長(左)=珠洲市三崎町杉山の丸和工業杉山工場

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