「運動場へは90%使う」理由は単純「早いから」 小学校の高台校舎から巨大すべり台、教員も魅了 丹波篠山

運動場への移動でジャンボすべり台を使う児童=西紀北小学校

 全校児童29人。のどかな山あいにある西紀北小学校(兵庫県丹波篠山市本郷)は2基の「ジャンボすべり台」が自慢だ。斜面は長い方が25メートルで、短い方でも15メートルあり、高台の校舎と運動場をつなぐ。単なる移動が遊びになる夢のような環境で、子どもたちは休み時間のたびに滑降。その魅力にあらがえず、実は大人もこそっと滑っていたりして…。(那谷享平)

 すべり台のスタート地点は校舎と体育館の間で、ゴールは運動場の隅。傾斜は長い方が28度、短い方が30度あるが、初めは怖がっている1年生でもしばらくすれば、すっかり慣れる。6年生の男子児童(11)と別の男子児童(11)は「楽だし、楽しいし、早い。運動場に行くときは、90%くらい使うかな」と話す。

 設置は1988年に旧多紀郡や三田市などで開催された祭典「ホロンピア’88」前にあった作文コンテストがきっかけ。当時の同校1年生が「多紀連山にすべり台を付けたい」との夢を書き、県知事賞に選ばれた。それを知った地元建設会社が「子どもの夢をかなえたい」と造った。

 すべり台は知らない人には驚きでも、児童にとっては当たり前の存在。「ほかの学校ってどうやって校庭行くの?」。そんなふうに考える子どももいる。先生たちも授業で校庭に下りる際は一緒に使うという。理由を聞くと、子どもたちと同様に「早いから」だそうだ。

 そんな同校の日常に学外の人たちは羨望(せんぼう)のまなざしを向ける。行事などで訪れた他校の児童は大喜び。研修などで訪れた他校の先生たちも放課後を見計らって滑っている。堀香織校長は、大人でも滑りたい人には「どうぞ、どうぞ」と快く応じる。

 「こんなに大きなすべり台、大人でも絶対に滑りたいに決まっているじゃないですか。恥ずかしいことではありませんよ」

 取材に訪れた人も皆、滑っていくという。動画の撮影と称して滑ってみると、本当に楽で楽しい。滑り終えた後、「普段使うあの階段やこの階段もすべり台にならないだろうか」と子どものような空想に浸った。

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