「あっという間に食べ尽くされた」アジサイやシャガの名所、見るも無残に 姫路北部のシカ食害深刻

シカによりアジサイの葉が食べ尽くされた「あじさいの里」(安志加茂神社提供)

 兵庫県姫路市北部の安富町や夢前町で、花の名所がシカの食害に遭っている。梅雨の季節に見頃を迎えるアジサイや、山裾にひっそりと咲くシャガ。かつては地域を代表した花が増加するシカに食べられ、その数を減らし続けている。それぞれの地域では、地元有志らによって美しい景観を取り戻す動きがある。(森下陽介)

 同市安富町安志の安志加茂神社に隣接する「あじさいの里」。以前は約2万平方メートルに大輪が咲き誇っていたが、2015年ごろから数が減り、今は10分の1の約2千平方メートルでまばらに咲くのみだ。

 かつては同神社境内にも多くの花が咲いていたといい、近くの男性は「シカの生息域が南下するにつれ安富でも頭数が増え、アジサイの葉があっという間に食べ尽くされた」と話す。

 管理する姫路市の担当者は「インターネットで検索すると最盛期の写真が出てくるので、訪れた人はがっかりする。何とか景観をよみがえらせたいという地元の声は根強い」とする。

 シカの侵入を防ぐため、ポリエステル製の網を設けていたが効果は薄く、21年度に金属製の柵に替えた。今年は地元住民らが200本以上の苗を植え付け、同神社の真田慶樹宮司は「今年のシーズンには間に合わないが、花が開く数年後を楽しみにしてほしい」と呼びかける。

 食害に悩む地域はほかにもある。同市夢前町山之内地域ではかつて、県道沿いにシャガの花が連なっていた。紫や黄色の繊細な模様が入る白い花を地域の活性化に生かそうと、住民らで一帯を「シャガの里」として打ち出したこともあった。だが、今ではシカにほとんどを食べられ、小さな群生地が数カ所に点在するのみだ。

 近くにそびえる名峰・雪彦山に登る登山愛好家らは昨年、景観の復活に向けて山の麓の2カ所に計1200本の苗を植えたが、数日でシカにより全滅。参加した同市香寺町の男性(73)は「シカの被害に遭わなさそうな場所を選んだつもりだったが…。無事に苗を残す方法を模索したい」と声を落とした。

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