実は麻の生産量日本一 鹿沼で麻倉100年の歴史一般公開 9日から

一般公開される「麻倉」

 【鹿沼】市が全国一の生産量を誇る「麻」の歴史を知ってもらおうと、かつて麻問屋を営んだ仲町の伝統工芸品店「大坂屋」で9日、企画展「麻倉100年の想い」が始まる。出荷前の麻を保管する「麻倉」として使われていた建物内部や、麻取引に使われた道具などを公開する。11日まで。

 市農政課によると、安価な輸入麻や化学繊維の台頭などにより、全国で1952年に5千ヘクタール近かった作付面積は、2021年には約7ヘクタールに激減。そのうち8割弱を市内で生産している。

 西部の永野地区を中心に、山間で災害が少ないなど栽培に適した条件に恵まれている。9軒の麻農家はすべて無毒麻「とちぎしろ」を扱っており、大相撲の横綱が締める縄や神社の鈴緒などに使われている。

 同店は1704年創業。江戸時代末期から大正時代初期にかけて、麻の問屋業を営み、市内に工場を持つ「帝国製麻(現・帝国繊維)」と取引を行うなどしていた。現在店舗として使っている建物は1923年、麻の保管倉庫として建築した。現在は1階部分を改装し伝統工芸品「鹿沼箒(ほうき)」などの販売を行っている。

 企画展では普段倉庫として使っている2階を公開。明治〜昭和時代に市民が着ていた麻製の着物や戦時に日本海軍も使っていた麻製のロープ、竿秤(さおばかり)と呼ばれる麻を計量する道具、帳簿などを展示する。

 建物の完成を記念して天井を支える梁(はり)に記された「天長地久(てんちょうちきゅう)」の文字も見どころの一つ。継続的な商売繁盛を願ったという。同店15代目店主鈴木隆(すずきたかし)さん(69)は「どれも希少なものばかり。鹿沼の産業を支えた麻の歴史を知るきっかけにしてほしい」と話している。

 午前10時〜午後5時。入場無料。(問)同店0289.62.2076。

© 株式会社下野新聞社