７５年前、ハンセン病と診断され、小学校を卒業できなかった８７歳の男性の卒業式が６月１日、静岡市で行われた。男性がいま思うことは？
卒業証書を受け取ったのは、御前崎市出身の石山春平さん（８７）
同級生や支援者の働きかけに応えた御前崎市教育委員会が主催し、実現した。同級生や親族が見守るなか、緊張した面持ちで卒業証書を受け取った。
（石山春平さん）
「小学校を追い出されてき今日に至っている。私の卒業式はピンとこないが、孫がもらう時代」
式が始まる前、同級生と思い出を語り合っていた。
（石山春平さん）
「学校追い出されてから忘れたかと思ったが、覚えていてくれてうれしかった、実家が近いから学校終わってから結構遊んだことがある」
笑顔の石山さんだが、式の直前、気持ちを聞いてみると。
Ｑ．卒業式直前の気持ちは？
（石山春平さん）
「胸が締め付けられるような何ともいえない感情、教室を追い出された過去がある」
７５年前、受け取るはずだった卒業証書を手にした石山さんに、会場からは惜しみない拍手が送られた。喜びの半面、よみがえってきたのは小学６年生の頃の忘れられない記憶だった。
石山さんが「ハンセン病」と診断されたのは、小学校６年生の夏のことだった。
（石山春平さん）
「いつも朗らかな父が首をうなだれて診察室から出てきた『お前は人には言えない病気になってしまった』と」
２学期の初日、担任に診断書を渡すと、突然、教室から追い出され、小学校を強制退学させられたのだ。
（石山春平さん）
「教室に入ったら前日まであった机と椅子がない（担任に）後ろから蹴られて体が宙にとんだ」
当時、ハンセン病に対する理解は進んでおらず、隔離政策によって家族や友人と突然切り離されたのだ。
石山さんは自宅の納屋で暮らしたのち１６歳から１５年間、御殿場市の「神山復生病院」に入所し、療養生活を送った。退所後は、運転免許を取り、障がい者の移動を介助するヘルパーとして働き、結婚して３人の子宝にも恵まれた。
７５年越しの卒業式は、石山さんにとって忘れられない一日になったようだ。
（石山春平さん）
「感無量、卒業証書は自動車学校でもらった１枚しかない。残り少ない私の人生の中において、生涯の心の宝にしたい」
