【SNS特報班】自治体「介護、福祉に財源配分」

敬老祝い金の削減について、民生委員から説明を聞く高齢者サロンの参加者ら=宮崎市の出来島・高洲コミュニティセンター

前向きに生きる励み失う 一律支給 見直しの流れ
 「敬老祝い金」の見直しで、本年度から80歳への支給がなくなった宮崎市。今月中旬に宮崎市の出来島・高洲コミュニティセンターで開かれた高齢者サロンで、民生委員の廣田美佐子さん(72)が削減となったことを説明すると地域住民から落胆の声が漏れた。
 同市高洲町の甲斐睦子さん(77)は「80歳を前向きに捉える一つの機会だったので寂しい」と語った。コロナ禍前は民生委員が祝い金を届けることもあった。廣田さんは地域を回る中で「削減理由などを尋ねられることも多い」という。
 見直しの背景にあるのは今後も進む高齢化。市福祉総務課によると、市の高齢化率は2015年の25.5%から50年には39.0%になると推計される。
 総人口は減少するが、祝い金の予算は年々増加しており、同課は「税収減が見込まれる中、必要な事業に財源を集中する必要がある」と説明する。今回の見直しで本年度は約6千万円を捻出でき、介護予防や認知症対策など高齢者福祉の充実に充てるという。
 長寿を祝う事業の多くは、自主財源で賄われている。支給を見直した市町は、「支給額が増えた状況を考慮した」(都城市)などと財政事情を理由とし、「認知症対策などに充てるため」(日南市)などの回答もあった。80歳への祝い金の支給を20年度から廃止した小林市は、経過措置として2年間は記念品を贈った。
 一方で日之影町は住民の要望などを受けて昨年度から100歳の祝い金を拡充し、88歳も対象に加えた。椎葉村も15年度から、80歳以上への支給額を増額している。県外では、80歳への祝い金を廃止する条例改正案が反対多数で否決された自治体もある。
 宮崎公立大前学長で鹿児島大法文学部の有馬晋作客員教授(行政学)は「自治体の財政が厳しくなる中、人口減や少子化対策が重要となり、高齢者関連で一律支給の施策は見直される流れにある」と指摘。「さまざまな住民の声がある中で、財源をどう配分するか。首長の判断や予算を審議する議会の役割が問われている」としている。

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