おにぎり店、石川に続々 居酒屋、製塩会社など新業態で

石川の食材を使ったおにぎり=金沢市尾張町1丁目

  ●「中食」定着、参入しやすく

 石川県内で、おにぎりの専門店の開業が相次いでいる。コロナ下で定着した持ち帰りの「中食(なかしょく)」需要を取り込もうと、居酒屋などが新業態として出店する動きが見られる。コメの価格は小麦や卵に比べて比較的安定しており、小規模なスペースで出店できるなど参入のハードルが低い点も背景にあるとみられる。

 金沢市尾張町1丁目で4月15日、能登産のコメを使った専門店「山里の咲(しょう)」がオープンした。具材は能登牛や五郎島金時、ブリ、フグの子ぬかなど全て石川の食材で、会社員や観光客らに人気という。

 運営するAnte(加賀市)は、珠洲の揚浜式塩田で天然塩を製造している。同社はおにぎりを通じて、コメの味を引き立てる塩の魅力も伝えたいと出店を決めた。中巳出理社長は「能登が生んだ味を存分に堪能してほしい」と語った。

 石川県内で居酒屋など7店舗を展開する「こよみ」(野々市市)は7月6日、小松市のイオンモール新小松に新業態となる「ほのむすび」を開業する。

 既存店でおにぎりの人気が高く、定番の梅やおかかに加え、能登豚など地元食材を使った23種類を用意。具材で違いが出しやすく、店舗運営のしやすさも魅力だとし、郊外への出店も見据える。

 コメの卸業者がおにぎりなどの提供を始めるケースも見られる。米屋(野々市市)は2018年、持ち帰り専用で塩むすびの販売を始め、今年8月からはイートインスペースでおにぎりや米のスイーツを提供する。魚住雅通社長は「直販を強化し、米食の魅力を発信し続けたい」と語った。

  ●米心のひゃくまん穀おにぎり年々増加

 石川県産米「ひゃくまん穀」を使ったおにぎりも好評だ。製造、販売する米心石川(金沢市)によると、出荷量は年々増加し、地元企業とのコラボ商品や季節限定商品の引き合いも強いという。

  ●市販のニーズ高く

 調査会社マイボイスコム(東京)の22年の調査では、「市販のおにぎりを食べることが多い」と答えた人は50.8%で、「自宅のおにぎりが多い」の35.3%を上回った。

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