排水能力超え浸水か 茨城・取手の双葉地区 被災者に炊き出し 罹災証明、申請始まる

取手市食生活改善推進協議会がお弁当とスープ、フルーツを配布した=取手市野々井

台風や前線の影響に伴う大雨被害で約600戸が浸水した茨城県取手市双葉地区で、排水ポンプの能力を超えて水が流れ込む「内水氾濫」が起きた可能性があることが5日、分かった。市は降雨時にポンプ稼働を確認していたという。避難所では弁当配布など炊き出しが始まり、市役所などでは罹災(りさい)証明書の申請も開始。一方、避難所生活の市民からは不安の声が上がった。

市によると、同地区は水田地帯に造成された住宅地。南北には小貝川と牛久沼があり、さらに2本の農業用水路にも囲まれている。

地区内には浸水防止用のポンプ場が2カ所あり、一定以上の水量になると、計5台のポンプが自動で水路に排水する仕組み。大雨となった2~3日は、市職員がポンプ場を見回り稼働を確認していたという。

このため、市は同地区の浸水被害について、二つの水路に加え、小貝川も増水したためにポンプによる排水が追い付かなかったことが原因とみている。

一方、同地区住民らの復旧活動は5日も続いた。認定こども園「つつみ幼稚園」では、職員総出で水に漬かった棚や椅子などを園舎から運び出した。園幹部は「一日も早く子どもたちを受け入れられるようにしたい」と話した。

自宅1階が浸水した女性(80)宅には市外に住む家族が集まり、水に漬かった床の清掃や消毒作業を進めていた。

市は同日、同地区に限定した災害ごみの受け入れを開始。また、市役所と藤代庁舎で罹災証明書の申請窓口も開設した。

避難所の「取手グリーンスポーツセンター」(同市野々井)では、市食生活改善推進協議会(ヘルスメイト)がボランティアで弁当30食を配布した。同センターは一時26世帯44人が避難。同日午後6時現在も、7世帯14人が避難生活を送っている。

同地区のアパートで1人暮らしという久本明弘さん(51)は、消防にボートで救出された1人。3日午前3時半ごろに浸水に気付き、「怖くて朝まで眠れなかった」と話した。避難所では「非常食や毛布を支給してもらい、炊き出しで温かいご飯を食べられた。本当に助かる」と謝意を示す一方、今後については「頼る人もいない。これからどうすればいいのか」と肩を落とした。

5日から始まった被災・罹災証明書の申請窓口=取手市藤代

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