染み込んだ性別役割意識 宇都宮共和大・蟹江教子教授が分析 バイアスチェックまとめ

蟹江教子教授

 ジェンダー(社会的な性差)への考え方やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の現状をひもとこうと、5月に計4回掲載した読者アンケート「バイアスチェック」。働き方などについて性別役割分担意識が根強く残っていることが明らかになった。総括として、家族社会学が専門の宇都宮共和大子ども生活学部の蟹江教子(かにえのりこ)教授に分析してもらった。

 アンケートの設問は「男性は働いて家計を支えるべき?」「育児中の女性は重要な仕事をすべきではない?」「女性には女性らしい感性がある?」「女性は感情的になりやすい?」「デートや食事のお金は男性が負担すべき?」の五つ。いずれも男性の方が女性より「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」とする肯定派が多い結果となった。

 蟹江教授は「かつては男子は技術、女子は家庭科を履修するなど、学校教育でも『男は仕事、女は家庭』という考えが育まれた。『女性には母性がある』『女性は結婚したら家庭に入って夫を支える』という性別役割分担意識からの脱却は難しい」と説明する。本県のように製造業で働く男性が多い地域では夫の転勤で妻が仕事を続けにくいこともあり、より難しさが増すという。

 「性別役割分担が成り立つための必要不可欠な条件は男女の賃金格差」(蟹江教授)だが、格差がほとんどなくなっている20代以下でも男性の4割が「デートや食事代は男性が支払うべきだ」、7割が「育児中の女性は重要な仕事をすべきではない」と回答。「男性自身が『男はこうあるべきだ』との考えから抜け切れていない」ことがうかがえる結果となった。

 ただ、蟹江教授は「育児中の女性は重要な仕事をすべきではない?」の質問に50代男性の7割が「そう思わない」「どちらかと言えばそう思わない」と否定的な見解を示したことに注目する。職場を管理し、部下を育てる立場にいる50代男性はセクシュアルハラスメントやアンコンシャスバイアスに関する企業内教育を受けていることが多いため、「女性を戦力として育てる必要性を感じており、性別役割分担意識を変えざるを得ないのでは」と分析する。

 ジェンダーギャップやアンコンシャスバイアスを解消する目的は「生きにくさをなくすこと」と説く蟹江教授。「企業や家庭、社会の在り方を変えていく必要があるので、一歩ずつ進むしかない」とした上で、「一人一人が相手とコミュニケーションを取りながら自分自身のバイアスに気付いて改善することが重要」とアドバイスする。

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