保育教諭は忙しい…記者が仕事を体験してみた 大切なことは安全と「気づき」与える声かけ

山登りでカタツムリを捕まえる記者=5月、福井県敦賀市の天筒山

 深刻な人手不足が叫ばれる保育の現場。保育教諭たちは子どもの世話や指導、行事の企画・実行、事務作業など忙しい毎日を送っている。苦労ややりがいをほんの少しでも感じてみたい。福井新聞記者が福井県敦賀市の第二早翠幼稚園で、保育教諭の仕事を体験させてもらった。

▽初仕事は山登り

 午前9時、園に到着。数人の先生にあいさつを済ませ、徳本達之園長(63)に園内を案内してもらった。「子どもたちに『気づき』を与えるような声かけをしてあげてください」。園長のアドバイスを心に刻む。

 この日は年長組の園児約80人と、バスで10分くらいの天筒山で山登り。初仕事が「園外保育」というハードルは、171メートルという標高以上に高く感じる。バスに乗り込むと園児たちが先に行儀良く座っていた。記者も補助席に腰を下ろす。丸刈りにひげの「知らないおじさん」に対し、園児はこっちを見てくれない。

 発車してすぐ、先輩保育教諭から園児たちに紹介される。「よろしくね」とお隣さんにあいさつすると、目を合わせてくれたが会話は弾まない。果たして今日一日で仲良くなれるのか…。

▽打ち解けてきた

 「ふじ組」の23人と昆虫や植物を探しながら登った。しばらくすると、手をつないでくる子や「せんせい、ダンゴムシいた」「アリも」などと話しかけてくれる子も。うれしい。だんだん打ち解けてきたが、徳本園長が言っていた気づきへと導く声かけが難しい。

 ほかの先生の動きを観察する。時に立ち止まり、虫に食われた葉っぱやシダ植物、カタツムリなど目ざとく見つけ、園児の好奇心をくすぐる。さすがだ。

 午前11時過ぎ、山頂に到着。展望台で景色を楽しんだ後は、待ちに待ったお弁当の時間。「新幹線が楽しみ」「キャベツ嫌い」。おしゃべりしながら食事し、一息ついたのもつかの間、食べ終わった園児が次々と遊びだした。収拾がつかなくなりはしないかと不安になりながら、遠くにいかないよう目を配った。

 先生たちは、食べるスピードが遅い子を気にかけたり、敷物がうまくたためない子の手助けをしたり、園児に寄り添っていた。

▽テンション下げないように

 先生たちは、どういうことに気を付けて山登りに臨んでいたのだろう。

 この春から年長組を担当している男性教諭(32)は「子どもが楽しむのが一番。外に出ると子どもは“高ぶる”ので、危険なことは注意しながら、テンションをいかに下げないようにするかを心がけました」。意外にシンプルな答えだった。

 大きなトラブルもなかったし、記者のひげをいじってきた園児たちのテンションを下げないように、(引きつった?)笑顔で応じることができたので、まあ及第点だろうか。

「保育士」になるには…養成施設卒業か試験

 ランドセルメーカーが実施する小学1年生の「将来就きたい職業」アンケートで、毎年女子の上位にランクインするのが保育士。人気の保育士になるにはどうすればよいのだろうか。

 保育士資格を取得するには、二つの方法がある。

 一つは、厚生労働大臣が指定する大学・短大・専門学校など「指定保育士養成施設」を卒業すること。高校卒業後に保育士を目指す場合の進路として一般的。福井県内には仁愛大学人間生活学部子ども教育学科、仁愛女子短期大学幼児教育学科、福井県医療福祉専門学校こども・介護学科がある。

 もう一つは、年2回実施される保育士試験に合格すること。受験資格を満たす必要があるが、指定保育士養成施設以外の学校の卒業者や、社会人でも資格取得を目指すことができ、幅広い人に道が開かれている。

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