茨城・日立市郷土博物館 戦時下の生きた証し 7月30日まで 資料30点初公開

戦争関連資料や空襲被害を捉えた写真などが並ぶギャラリー展=日立市宮田町

太平洋戦争末期の日立空襲から78年を迎えるのを前に、茨城県日立市郷土博物館のギャラリー展「戦時下の新収蔵資料」が6日、同市宮田町の同館で始まった。軍の所属部隊の足跡を克明に記録した国旗など、初めて公開される資料30点が、戦時下の市民の生きた証しを伝えている。7月30日まで。

日立製作所などの軍需工場が数多く立地していた同市は米軍の標的となり、1945年6月10日と7月17日、同19日と3度、空襲や艦砲射撃を受け、工場群や市街地は壊滅。1500人以上の犠牲者が出た。

会場には、戦争や戦時下の市民生活に関わる実物資料30点と、展示資料にまつわる写真25点が並ぶ。戦時下を経験した世代が急速に減少し、戦争体験の継承が難しくなっている。今回、市民から近年寄贈された資料を中心に紹介しようと企画された。

「日章旗」は、水戸歩兵第二連隊の隊員が1932年に上海、満州に出動した際の資料。白地には、水戸駅を出発し、約半年後に召集解除されて宇品(広島)港に戻るまでの行動が日付とともに詳細に手書きされ、「戦闘」や「討伐」などの文字も並ぶ。

また愛国婦人会の会員木札や、軍艦が描かれた戦時貯蓄債権、繊維品配給の申込書などの展示を通じ、戦争で市民の暮らしが大きく変化していった様子も紹介されている。

同館学芸員の萩原明子さんは「一点一点をじっくり見て、その奥にある当時の状況を想像してもらう機会になれば」と話している。

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