伊丹・天神川決壊前から住民は懸念「工事中、川幅足りないと感じた」 自宅戻れず悲痛な訴え「元の暮らしに戻して」

応急の復旧工事を終え、川幅が戻った天神川。小雨が降る中で水流はわずかだった=伊丹市荒牧6

 兵庫県伊丹市の天神川の堤防決壊から約1カ月。現場では川幅をいったん元に戻す兵庫県の復旧工事が終わり、周辺の土砂も片付けられていたが、自宅が浸水した住民からは生活再建へ不安の声が聞かれた。

 浸水した自宅に今も戻れない女性は、堤防決壊前から懸念を抱いていたと明かした。「雨が多いときはかなり増水するので、(県が川幅を狭めて実施していた)工事中は川幅が足りないと感じ、不安だった」

 5月8日未明に「音がうるさくて自宅から見ると、堤防が決壊し、流された車も見えた」。身の危険を感じて避難し、眠れぬ夜を過ごした。「県や市の対応を信じている。求めるのは、元の暮らしに戻してほしいということだけ」と話す。

 県は国のガイドラインに沿って河川工事を行っていたが、堤防決壊時は想定を上回る雨が降り、水位が上昇。発生直後に被害状況を視察した斎藤元彦知事は「補償についても丁寧に対応したい」としていた。

 県は本来予定していた天神川の残りの工事について、8日からの調査委員会の結果を受け、改めて工法などを判断する。被災住民の補償方針についても、調査委の結果を踏まえるとみられる。

 当初から家屋の片付けなどで助言し、被災者を支援する被災地NGO恊働センター(神戸市兵庫区)スタッフの増島智子さん(52)は「今後のめどが立たない中で被災家屋にはカビが生え、被災者は先が見えない不安を抱えている。行政には早急に対応してほしい」と話す。(井川朋宏)

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