通勤・通学時のクマ出没に騒然 酒田市街地

最上川を泳いで渡るクマ。この後、河川敷に上がり駆除された=7日午前9時17分、酒田市落野目の右岸から撮影

 7日午前7時25分ごろ、酒田市落野目の最上川河川敷にある「最上川スワンパーク」でクマ1頭が目撃された。クマはその後、市街地を移動し、小学校の近くや住宅エリアを通り、同9時55分ごろ、同市宮野浦の最上川支流・京田川の河川敷に入ったところで、猟友会が猟銃を使って駆除した。被害は確認されなかったが、通勤・通学時間帯の市街地での出没に、市内は一時騒然となった。

 酒田署や酒田市によると、クマは体長1.2メートルほどで、体重約50キロの雄で、推定4歳だという。国指定史跡・山居倉庫や亀ケ崎小付近で目撃情報が相次ぎ、同署はパトカー約20台で警戒した。通勤や通学で市民が行き交う中、防災行政無線のスピーカーからは注意を呼びかけるアナウンスが流れた。

 クマは同9時15分ごろ、再び河川敷に戻り、最上川を右岸から左岸へ泳いで渡った。出羽大橋から約600メートル上流側の京田川河川敷で、猟友会が駆除した。山居倉庫では自動ドアを一時手動に切り替えるなどした。亀ケ崎小(赤坂宜紀校長、443人)では、同校付近でクマが目撃されたころは、既に児童は登校済みで、校内放送で外に出ないよう注意を呼びかけた。

追い込み、泳ぐクマ待ち受け

 「クマが渡っているぞ」。河口付近で、川幅の広い最上川をクマは対岸まで泳いでいた。黒い頭部を川面に出し、進んでいた。

 酒田署や市、猟友会など約70人が市街地に現われたクマを追っていた。(1)最上川スワンパークで目撃された後、(2)市体育館(3)山居倉庫に移動。午前8時過ぎに(4)亀ケ崎小付近に移ると、緊張感は高まった。児童は既に校舎内にいたが、パトカー数台が警戒。クマは追いやられるように、(5)若竹町2丁目に逃げ、(6)港南公園を経て、(7)最上川スワンパークに戻った。

 猟友会は住宅街や市街地から、人のいない河川敷に追い込む作戦だった。クマは自ら河原に戻り、泳いで渡り始めた。

 先回りし、待ち受けた県猟友会酒田支部酒田分会が駆除。約30メートル先のクマを仕留めた男性(75)は「安全に駆除できた。少しかわいそうだが…」。同市山居町1丁目の無職平野哲夫さん(77)は「街中でクマが出るとは驚いた。被害がなくて良かった」と話した。

県内での目撃や出没、過去10年間で最多

 県警地域課によると、県内でのクマの目撃や出没などの件数は5月末現在で過去10年間で最も多い状況だ。人的被害も確認されており、6月ごろからは繁殖期に入るため、注意が必要となっている。

 同課によると、クマの目撃・出没、人的被害は5月末現在、117件で前年同期比44件増となっている。同じ場所で複数回目撃されているのも特徴だ。人的被害は小国町五味沢で5月19日に発生している。

 目撃・出没件数の増加について、県みどり自然課は「暖冬で活動の開始時期が早まっている」と分析。5~7月は、生後1年半ほどの若いクマが母親から離れて移動を始める時期で、雄が雌を求めて行動範囲を広げる繁殖期とも重なり、普段生息しない地域にも出没する恐れがあるという。

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