イギリスで原爆被害展示 長崎の被爆医師・故調来助さんの体験紹介 戦争博物館

世界の戦争に関する資料が並ぶ英国の帝国戦争博物館に展示されている長崎の被爆医師、故調来助さんの家族写真や論文の一部が飾られているコーナー(調漸さん提供)

 英国や世界の戦争に関する資料を展示する英ロンドンの帝国戦争博物館で、太平洋戦争や原爆投下について紹介するコーナーが開設された。長崎原爆に関して、被爆直後の救護や後遺症研究に尽力した元長崎医科大(現・長崎大)教授の故調来助さん(1989年、89歳で死去)の被爆体験と調査論文の一部が紹介されている。
 同館は2021年10月、第2次世界大戦とホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を紹介する常設展示を新設。資料だけでなく、戦争を経験した100人超の物語を紹介し、その一角に太平洋戦争のコーナーも設けた。
 同館スタッフが17年12月、長崎大原爆後障害医療研究所のホームページ(HP)で来助さんの体験や研究内容を記したページを発見。HPを通じて、孫で長崎市立病院機構副理事長の調漸さん(67)に連絡した。漸さんは同館の展示趣旨に共感し、来助さんらの写真提供や打ち合わせを重ねた。
 展示完成がコロナ禍だったため、漸さんは今年3月、完成後初めて博物館を訪問。広島原爆の熱で溶けたガラスや原爆投下を知らせる新聞などと共に、来助さんの家族写真や翻訳された調査論文の一部などが展示されていた。日本人では来助さんの他、満州の日本兵や特攻隊員などが紹介され、リトルボーイ(広島に投下された原子爆弾と同型)の現物や撃沈された日本の戦艦の数を表す模型もあったという。
 漸さんは「海外の、それも連合国側、核保有国の英国の博物館で原爆をテーマにした展示は意義深い。(資料だけでなく)一市民の物語を通して、戦争の歴史や普通の人の人生が曲げられていくことが分かる。身内に戦争経験者がいる世代も高齢化する中で、これからの伝え方だと感じた」と語った。

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