「負債1,000万円未満の倒産」は今年最多の53件 5月では過去2番目、7年ぶりに50件台に乗せる

~ 2023年5月 「負債1,000万円未満」倒産の状況 ~

2023年5月の負債1,000万円未満の企業倒産は、2023年で最多の53件(前年同月比20.4%増)発生した。5月としては3年連続で前年同月を上回り、 2009年以降の15年間では2016年の55件に次ぎ、2番目に多かった。また、「新型コロナ」関連倒産は20件(前年同月13件)で、3カ月ぶりに前年同月を上回った。

産業別では、最多が「サービス業他」の22件(前年同月比57.1%増)。次いで、建設業(同40.0%減)と小売業(同33.3%減)が各6件と続く。
原因別は、「販売不振」が42件(同20.0%増)で、全体の約8割(79.2%)を占めた。コロナ禍の出口を見据え、資金繰り支援も徐々に縮小する中、業績回復が遅れた小・零細企業の息切れが多いことを示している。
資本金別では、最多は「個人企業他」の18件(構成比33.9%)を含む1千万円未満が49件(前年同月比19.5%増)で、小・零細企業が全体の9割(92.4%)を占めた。
形態別では、消滅型の「破産」が53件(構成比100.0%)だった。5月にすべての倒産が破産だったのは2015年以来、8年ぶり。小・零細企業の事業再生が難しい状況が背景にある。

5月8日、新型コロナウイルス感染症が5類相当に移行した。コロナ関連支援も順次、縮小や終了して支援効果は薄れつつある。企業倒産の抑制に大きな効果をみせた実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)の元金と利子の返済がピークを迎えるが、加えて物価高や人件費アップなどで、コスト負担が増大している。小・零細企業がコストアップ分を価格転嫁することは難しく、結果として業績回復が遅れ、収益が悪化する悪循環に陥っている。このため、今後も小規模倒産は増勢をたどる可能性が高まっている。

※本調査は、2023年5月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


倒産53件、5月では15年間で2番目の多さ

2023年5月の負債1,000万円未満の倒産は53件(前年同月比20.4%増)で、5月としては3年連続で前年同月を上回った。また、50件台は2016年(55件)以来、7年ぶりで、コロナ禍で小康状態が続いたが、支援効果の希薄化だけでなく、想定外の物価高に見舞われ増勢を強めた。
また、「コロナ」関連倒産は20件(同53.8%増)で、負債1,000万円未満の倒産の37.7%を占めた。前年同月(29.5%)を8.2ポイント上回り、次第にコロナ禍の影響が強まりつつある。
負債1,000万円未満の倒産はほとんどが小・零細企業だけに、コロナ禍の傷が癒えないまま、人手不足や物価高などが経営を直撃した格好となった。

【産業別】6産業で前年同月を上回る

産業別では、10産業のうち、6産業で前年同月を上回り、減少が4産業だった。
最多は、サービス業他の22件(前年同月比57.1%増)で、5月では初めて20件台に乗せた。構成比は41.5%(前年同月31.8%)だった。
このほか、不動産業が4件(前年同月比100.0%増)で2年ぶり、農・林・漁・鉱業が2件(同100.0%増)で3年ぶりに、前年同月を上回った。また、情報通信業5件が2年ぶり、金融・保険業1件が3年ぶり、運輸業4件が6年ぶりに、それぞれ発生した。
一方、建設業6件(前年同月比40.0%減)と卸売業2件(同50.0%減)、小売業6件(同33.3%減)が3年ぶり、製造業が1件(同75.0%減)で4年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

業種別では、野菜作農業(前年同月1件)のほか、受託開発ソフトウェア業、一般貨物自動車運送業、不動産代理業・仲介業、労働者派遣業(以上、同ゼロ)が各2件。このほか、電気配線工事業、給排水・衛生設備工事業、一般乗用旅客自動車運送業、貨物軽自動車運送業、生鮮魚介卸売業、婦人服小売業、洋品雑貨・小間物小売業、料理品小売業、中古品小売業、土地売買業、自動車賃貸業、土地家屋調査士事務所、翻訳業、食堂,レストラン、ラーメン店、酒場,ビヤホール、配達飲食サービス業、旅行業、学習塾、表具業、看板書き業などが各1件(前年同月ゼロ)発生した。

【形態別】破産の構成比が100%

形態別は、53件(前年同月比23.2%増)が「破産」だった。すべて破産だったのは、5月としては2015年以来、8年ぶり。
負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業のため、人的・資金的な制約もあり、経営に行き詰まると再建が難しく破産を選んでいるようだ。
一方、再建型の民事再生法は2年連続、会社更生法は2009年から15年、それぞれ発生がない。また、取引停止処分は3年連続でゼロだった。

【原因別】販売不振が約8割

原因別の最多は、「販売不振」の42件(前年同月比20.0%増)で、5月では3年連続で前年同月を上回った。構成比は79.2%で、前年同月の79.5%から0.3ポイント低下した。
「既往のシワ寄せ」(赤字累積)は、前年同月と同数の2件だった。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は、44件(同18.9%増)で、3年連続で前年同月を上回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は83.0%で、前年同月の84.0%から1.0ポイント低下した。
このほか、「運転資金の欠乏」1件が5年ぶり、「他社倒産の余波」4件と「信用性低下」2件が2年ぶりに、それぞれ発生した。代表者の病気や死亡を含む「その他」は前年同月と同件数の1件(同ゼロ)で、2年ぶりに前年同月を上回った。
一方、「事業上の失敗」が1件(前年同月比83.3%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。

【資本金別】1千万円未満が9割

資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が49件(前年同月比19.5%増、前年同月41件)で、3年連続で前年同月を上回った。構成比は92.4%(前年同月93.1%)で、5月としては5年連続で90%台になった。内訳は、「個人企業他」18件(前年同月比63.6%増、前年同月11件)、「1百万円以上5百万円未満」15件(同21.0%減、同19件)、「1百万円未満」10件(同150.0%増、同4件)、「5百万円以上1千万円未満」6件(同14.2%減、同7件)。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が4件(同33.3%増、同3件)で、2年連続で前年同月を上回った。「5千万円以上1億円未満」が5年連続、「1億円以上」が2009年より15年連続で、それぞれ発生しなかった。

© 株式会社東京商工リサーチ