【タイ】博報堂、ASEAN「新興富裕層」を深掘り[経済]

生活総研アセアンの伊藤祐子社長(右から2番目)らが調査結果を発表した=7日、タイ・バンコク(NNA撮影)

博報堂グループのシンクタンク、博報堂生活総合研究所アセアン(生活総研アセアン)は7日、タイの首都バンコクで、東南アジア諸国連合(ASEAN)の消費者の意識・行動に関する最新の調査結果を発表した。今回は中間層と富裕層の間に存在する「新興富裕層」に着目。生活は質素であるものの家族との「コト消費」への投資は惜しまず、「モノ消費」では機能性を重視するといった傾向をあぶり出した。

生活総研アセアンは毎年、テーマを決めてASEANの消費者動向を調査し、報告書をまとめている。調査結果の発表会は今回、3年ぶりにオンサイトで開催された。

今回のテーマは「アセアンの隠れたセグメント“新興富裕層”を解き明かす」と題して、中間層や富裕層とは異なり、自力で上の社会階層に移行しようと努力する新興富裕層に焦点を当てた。ASEAN6カ国(タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポール)での訪問調査(昨年9~10月に実施、対象44人)と、ASEAN6カ国と日本でのオンライン調査(昨年12月に実施、対象2,290人)を基に、新興富裕層が持つ社会的背景、人生観、価値観、消費行動を分析した。

調査結果によると、新興富裕層は人生に戦略的かつ中長期目線を持ち、何よりも自分と家族の生活の安定性確保を優先し、豊かさへの強い渇望を持つ。一方で今の暮らしや社会階層からの転落や、周囲からの嫉妬を恐れており、謙虚で身の丈に合った生活を好む傾向があるという。

消費行動の特徴としては、家族との思い出を大事にするため旅行などへの投資は惜しまず、モノ消費では機能性の高さを最も重視する傾向が強いと分析した。

生活総研アセアンは、新興富裕層は人口の多い中間層の手本となりやすいため、彼らの心を掴むことで新たなビジネスチャンスを生み出すことができると指摘している。

タイの新興富裕層については、「ぜいたくの価値」に関する質問で「VIPとして優遇されるため」と回答した割合が51.3%に上り、ASEAN全体の23.5%に比べ格段に高かったことに言及。家族を幸せにすることを重要視している傾向も特に強いことから、家族で体験できる「プチVIP待遇」などを商品・サービスに盛り込むことが、タイでの販売拡大につながる可能性があると提言した。また、身なりで人が判断されやすいタイ社会では、ブランド品・高級品は「自身を信頼してもらうため、うまく世渡りをするための通行手形になっている」との見方を示した。

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