避難所、おにぎり、お湯提供… 大雨から1週間 茨城・取手の双葉自治会、手助け奮闘 半数が高齢者

浸水被害当初から住民の支援に奮闘する双葉自治会。諏訪道明副会長(左)が相談に応える=8日、取手市双葉

台風2号や梅雨前線の影響で茨城県取手市双葉地区の約600棟が浸水被害を受けた大雨から9日で1週間となる中、住民でつくる「双葉自治会」が奮闘している。活動場所の「自治会館」を浸水直後から緊急の避難所として開放。食料や物資、風呂が壊れた被災宅にはお湯を提供。住民約2千人の約半数を高齢者が占める団地内で、献身的なサポートを続けている。

■自力での支援

自治会副会長の諏訪道明さん(64)が外に出ると、見たことのない景色が広がっていた。自動車やごみが漂流。胸まで水に漬かりながら、信じられない気持ちで歩いた。自治会役員が急きょ、おにぎりを作り、飲料水と一緒にボートに乗せて一軒一軒、届けた。

諏訪さんの携帯電話には前夜から「食べ物がない」「水に漬かって家から出られない」と助けを求める電話が何件も届いた。ご近所さんを助けたいという気持ちと、「なぜ、こんなことに」という怒りにも似た思いが込み上げた。

自治会は被災直後、2階建ての自治会館を開放し、避難民を受け入れた。8日は、住民への支援情報を集め、消毒液を配布、助けに来てくれた多くの市民ボランティアの誘導などに当たった。

支援するのは、自治会役員7人や住民有志。常総市のNPO団体や市社会福祉協議会の力も借りる。

風呂が浸水で故障した住民もいる。8日は、軽トラックにボイラーを載せて希望者宅を回り、お湯を沸かして届けた。自動車を失った住民も多い。来週には、日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)の支援を得て、車の無料貸し出しを始める予定だ。

■半数が高齢者

双葉地区はかつて「新川団地」と呼ばれた。高度経済成長期の1960年代、当時の藤代町(現取手市)で人口が増加。宅地開発され、66年に同団地への入居が始まった。当時、1650棟が建ち並ぶ県下有数の新興住宅地だった。市の史料や自治会事務所前の記念碑が伝える。

半世紀が過ぎ、団地の高齢化は加速。住民2140人のうち、約半数が65歳以上の高齢者となった。

空き地や駐車場、シャッターが閉まった店が並ぶ。60代男性は「自分は団地移住2世。同級生の多くは双葉を離れ、1人暮らしの高齢者や空き家が増えた」と寂しげな表情を見せる。

■人手不足にも

高齢化する団地で、支援を待つ住民は多い。

消毒液を求めて自治会館を訪れた女性(72)の家は、自動車やエアコンの室外機が故障。給湯器も壊れて風呂に入れない。車がないため入浴施設にも行けず、体を拭いてしのいできた。お湯をもらえると聞き、「お風呂に入れなくて疲れがたまっていた。本当に助かる」と笑顔を見せた。

今も避難所に家族5人で身を寄せる男性(37)は「家の片付けが終わらず、子どもも自分も体調を崩した」と困りつつ、「自治会の助けで何とか踏ん張れる」と頼りにする。

課題もある。自治会役員の中には仕事を休んでいる人もいる。手伝ってくれる住民はいるものの、「日がたつと、どうしても人手が不足してくる」と中尾早苗会長は声を落とす。

8日には関東甲信越が梅雨入りし、週末に広い範囲で大雨が降るとの予報も。中尾会長は「また浸水は困る。住民の皆さんが困らないよう精いっぱいサポートしたい」と話す。

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