タバコのニコチン抜けるまでどれくらい? 離脱症状のピーク、本数減らす節煙効果は…医師に聞く禁煙成功のポイント

 禁煙を決意しても、なかなか成功しない愛煙家は多いだろう。福井県済生会病院(福井県福井市)で30年近く禁煙外来を担当する呼吸器外科顧問の小林弘明医師は「たばこをやめられないのはニコチン依存症。病気であると認識することが大事」と強調する。禁煙を成功しやすくするポイントは「スパッ」とやめること。自力で難しい人は、補助薬と看護師らのサポートで禁煙を目指す専門外来を受診してみるのもいい。

たばこ吸うと余分にストレス生産

 たばこを吸うと、ニコチンが脳内の受容体に結合し、多幸感を生むドーパミンが分泌される。時間が経過するとドーパミンの分泌が低下し、落ち着かなくなる、イライラするなどの離脱症状が現れ、解消するためにたばこを吸いたくなる。このサイクル「ニコチン回路」が作られると、繰り返し吸い続けることになる。ニコチン依存症かどうかはスクリーニングテストで判断できる。

 「たばこを吸うとストレスがとれる」という声をよく耳にする。小林医師は「たばこで解消されるているのはニコチン切れによるストレス」と強調。ニコチンが切れるとドーパミンなどが出なくなり、ストレスを感じる。「たばこを吸うことで余分にストレスが作られる」と訴える。

軽めのたばこに変更、本数減らす「節煙」効果は…

 禁煙に向けて、まずは「軽いたばこ」に変えることや、本数を減らす「節煙」から始めようと思う人もいるだろう。小林医師は「効果は全くない」ときっぱり。「軽いたばこだから」と安心して本数が増え、節煙しても根本まで丹念に吸うことになり、ニコチン摂取量は結局変わらない。「完全禁煙で始める方が、つらい期間が短くて済む」と呼びかける。

 禁煙を決意したら、まずは禁煙に適した環境を整えることから始めよう。たばこやライター、灰皿などの喫煙グッズを捨て、家族ら周囲の人に協力を求める。2~3週間は酒席を避けるようにする。

 禁煙の効果はすぐに現れる。20分後から血圧や頻脈が改善し、8時間後には血中の酸素濃度が上昇する。72時間後には体から完全にニコチンが抜ける。

 だが、禁煙2~3日目は離脱症状がピークを迎えてつらい。吸いたくなった時は、▽冷たい水を飲む▽深呼吸をする▽口が寂しい場合は酢昆布やミント菓子を食べる―などを試してみる。吸いたい気持ちをコントロールするため、自分に合った方法を見つけておくといい。

 また、必ず経験するのが「1本だけならいいだろう」という誘惑。小林医師は「一本が命取り。一から出直しになってしまう。それまでの苦労が水の泡になる」と警告する。

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禁煙の成功率は8割超

 禁煙を手助けしてくれる頼もしい存在が「禁煙外来」だ。条件を満たせば保険適用になる。治療は通常3カ月で5回通院する。県済生会病院では、「禁煙教室」をまず受講してもらい、たばこの害や禁煙のメリットなどを理解してもらう。引き続き治療を希望すると、禁煙外来で医師が禁煙補助薬のニコチンパッチ(貼り薬)を処方。徐々にパッチの大きさを小さくし、ニコチン量を減らしていく。

 また治療中は、看護師がカウンセリングや電話などできめ細かく患者をサポート。「一人では耐えきれない。補助薬とサポートの両輪で治療していくので比較的楽に禁煙できる」(小林医師)。

 同病院の禁煙外来では、5回通院した人の禁煙成功率は約86%(2016~21年度)。成功者は「吐き気や胃痛などがなくなった」「いつも前向きなことを言ってくれるので継続しようと思った」などと振り返る。小林医師は「禁煙は失敗しても死ぬわけではないのでぜひ挑戦してほしい」と呼びかけた。

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