「Give Him The Ooh-La-La」(1957年、ヴァーヴ・レコード) 愛くるしい歌声と魅力 平戸祐介のJAZZ COMBO・26

「Give Him The Ooh-La-La」のジャケット写真

 新緑あふれる気持ち良い季節になりました。気候と同様、爽やかな音楽を欲しているあなたに、女性シンガー兼ピアニスト、ブロッサム・ディアリーのアルバム「Give Him The Ooh-La-La」(1957年、ヴァーヴ・レコード)をご紹介します。
 アルバム全体がジャズスタンダード曲を中心としたリラックス感あふれる内容になっており、どんなシチュエーションでも楽しめるのがうれしいです。それはディアリーのハートフルで愛くるしい歌声とギターのハーブ・エリス、ベースのレイ・ブラウンといった百戦錬磨のアーティストががっちりと脇を固めているのも一因だと思います。
 ディアリーの歌声は大変特徴があるので、好き嫌いがはっきりと分かれそうな感じもします。ジャケット写真でもお分かりの通り、ディアリーの美貌も相まって、聴けば聴くほど不思議な魅力に包まれます。
 もう一つ大きな要因と思うのが、10代からその才能を開花させたスイング感あふれるピアノ。そしてキャリア初期の1952年からパリへ移住していたことも要因だと思います。ハードな本場アメリカジャズと、柔和なヨーロッパのジャズテイストを見事に融合させたスタイルは当代随一でした。それは彼女のルックスともシンクロしているようで興味深いです。
 ヴァーヴ・レコードの創始者、ノーマン・グランツとの出会いも非常に大きかったようです。「君の歌を録音したい」という彼の熱意とラブコールが決定打となり、このアルバムが誕生しました。ディアリーの個性もここで確立されたと言っても過言ではないと思います。
 グランツといえば鍵盤の皇帝、オスカー・ピーターソン、ジャズボーカリスト御三家の一人、エラ・フィッツジェラルドらの才能を発掘したことでも有名です。本物のピアノ、本物の歌を知るディレクションに間違いはなかったということですね。
 新年度が始まって間もないこの時期、いろんなことに積極的にチャレンジしていくことで、自分が今まで気付かなかった新たな何かを発見できるかもしれない…。そんなことを思いながらこのアルバムを聴いています。(ジャズピアニスト、長崎市出身)

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