「1.26」

 首相肝いりの「異次元の対策」の素案が公表された翌日に深刻な実態を示す統計が発表されたのは、たまたまだったのか、それともあえてタイミングを合わせたのだろうか、と考えながら新聞を読み返している▲2022年の「人口動態統計」によると、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す「合計特殊出生率」はこの年「1.26」で、05年と並んで過去最低だった。生まれた赤ちゃんの数は1899年に統計が始まって以来、初めて80万人を割った▲3日付の解説記事は、夫婦の間に生まれる子どもの数が2人弱で、30年前から大きく変化していないことなどを理由に、少子化の最大の要因は「未婚化」だと結論づけていた▲ところで、前々から気になっていることが一つある。それは、子どもたちは“小数点付き”で生まれてくるわけではない-ということだ。個々の女性が産む子どもの人数はゼロか、1か2か3かそれ以上…で、この数字は基本的に1ずつしか増えない▲「ゼロ」を「1」にするのか、それとも別の数字に狙いを定めるのか、それにはどんな手法が効果的か-の議論や政策の濃淡があってもよさそうなのに、そこがあまり見えない▲より踏み込んだ検討が必要なように思う。もちろん、この問題が単純な算数でないことは大前提だが。(智)

© 株式会社長崎新聞社