アルピーヌの新型プロト『A424_β』がル・マンで初公開。メカクローム製3.4L V6ターボを採用

 アルピーヌは6月9日、ル・マン24時間レースが開催されているフランス、ル・マンにおいて、2024年のWEC世界耐久選手権ハイパーカークラスへの投入が予定されている新型レーシングカーのプロトタイプ『アルピーヌA424_β』を初公開した。

 ルノー傘下のブランドは、来季シリーズデビューするLMDhカーを示すクルマを披露するとともに、このクルマの初期の技術的詳細を明らかにした。

 アルピーヌA424_βのパワートレインは、ルノーF1との関連が深いメカクローム社の3.4リッターV6ターボエンジンが、LMDh規定の共通パーツに指定されているボッシュ製電気モーターやウイリアムズ・アドバンスド・テクノロジー製バッテリー、Xトラック社のギアボックスに接続されている。

 アルピーヌの長年のパートナーであるシグナテックは、このクルマを用いて2024年WECのトップクラスに復帰する予定だ。また、フランスのメーカーはLMDh規定の生みの親であるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権を含む「さまざまな分野で競争できるように」、カスタマーチームに新型プロトタイプカーを販売することにも前向きな姿勢を示している。

「今日、我々はアルピーヌA424_βを発表した。これは、来年から最高の競争相手に挑戦するために設計されたハイパーカーの先駆けとなるクルマだ」と語るのは、アルピーヌのローラン・ロッシCEO。

「この新しいプロトタイプは、『アルペングロー』や『A290_β』に始まる我々の創造物の足跡をたどりながら、我々の価値観に忠実に、“A-arrow”ブランドを未来へと導いている」

「アルピーヌA424_βは、その象徴的なデザインにより、レーシーでエレガント、そして個性的だ。デザイナーが開発に参加し、投資したおかげで、私たちの現在と未来の両方を体現している」

 LMDhの新しいエンジンサプライヤーであるメカクロームの選択は、F1におけるアルピーヌのパワートレイン・パートナーシップと一致している。

 A424_βのホモロゲーション取得に向けたさらなるテストに先立ち、完成車の火入れは6月28日に予定され、最初のロールアウトは7月下旬を目処に行われる予定だ。エンジンのダイノテストは、過去6カ月間にわたって実施されてきた。

「メカクロームは耐久レースの経験があり、2022年6月からいくつかの研究とテストを行ってきた」とアルピーヌLMDhチーフエンジニアのクリストフ・シャペランは述べた。

「そのおかげで、F1エンジニアのチームが仕様を作成し、アーキテクチャを定義し、希望するパフォーマンス範囲に合わせて調整できるように、そのメリットとデメリットを分析することができたんだ」

ル・マンでアンベールされたアルピーヌA424_β

■オレカシャシーに搭載されるエンジンはV6シングルターボ

「ビリー(のファクトリー)のエンジニアたちは非常に深くこのプログラムに関わっており、パワー、信頼性、素材を向上させるために、彼らの能力やリソース、方法を私たちと共有していた」とシャペランは続ける。

「簡単に言うと、3.4リットルのシングルターボV6だ。この構成を持つのは、我々だけだろう」

「最後に、F1との相乗効果で、我々のLMDhのソフトウェアはF1から強くインスパイアされていることに注意する必要がある。F1のコストキャップは、メカクロームで利用可能なものに加えてダイノタイムを解放してくれるので、私たちにとっても有利に働くんだ」

 アルピーヌは、1シーズンの中断を経て、来年からWECのトップカテゴリーに復帰する。2021年と翌年、アルピーヌは『レベリオンR13・ギブソン』としてレースを戦っていたオレカ製のノンハイブリッドLMP1マシンを『アルピーヌA480・ギブソン』としてハイパーカークラスに投入。トヨタとグリッケンハウスを相手にシリーズ最高峰クラスを戦った。

 今季2023年は“特例”による旧規定車での出場が認められなかったため、2018-2019年シーズンにドライバーズタイトルを獲得したLMP2クラスに復帰している。

「この新しいプロジェクトは、レーストラックを超えた私たちの野望を推進する、約2年にわたる途方もない冒険だった」とロッシCEO。

「我々のスタッフとパートナーは、このクルマを大成功させるために、たゆまぬ努力を続けている。すでにひとつの目処が立ち、来年からはスポーツとしての成功も確実なものとなるよう、懸命に取り組んでいく」

テールライトはALPINEの『A』がデザインに取り入れられた。
メカクローム製3.4L V6シングルターボを搭載するアルピーヌA424_β

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