取手・双葉、再建半ば 大雨1週間 茨城県内浸水785件に

浸水被害をもたらした大雨から1週間となった9日、雨具や長靴を身につけて登校する小学生=同日午前9時29分、取手市双葉

台風2号や梅雨前線の影響による茨城県内の大雨被害は9日で1週間がたった。家屋の浸水被害は785件に増えた。農業関連の被害額は2億8千万円を超える見通し。最も甚大な被害を受けた取手市では、双葉地区で浸水が集中し、今も8人が避難所生活を送る。災害ボランティアは延べ約300人が参加するなど復旧が進む半面、高齢者も多く、被災者の生活再建はまだ道半ばだ。

■今なお8人避難

県内では2日から3日にかけ、記録的な大雨が降った。県によると、建物被害は9日午後4時現在、床上浸水が474件で、このうち9割超に当たる436件が取手市で、双葉地区に集中している。床下浸水は311件で、最も多い同市では165件に増えた。被害状況は現在も調査中で、今後も増える可能性がある。

避難所は34市町で計138カ所開設され、213世帯364人が一時的に避難した。取手市では2世帯8人が今なお、避難生活を余儀なくされている。

けが人は計5人で、いずれも軽傷。水路への転落やバイクでの転倒など、行方市で2人、龍ケ崎、牛久、鉾田の3市で各1人が確認された。

道路冠水や倒木、土砂崩れなど24市町の266カ所で被害があった。3日午前3時54分現在、2市2285世帯あった停電は、いずれも復旧している。

■農業被害2.8億円

農林水産業関連の被害額は、推計で2億8735万円に上る。多くが農地への土砂流入、水路ののり面崩壊、用水機場の冠水などに伴う被害で、全体の約8割を占める。

用水機場など土地改良施設の被害は1億2950万円。鉾田市では排水路ののり面が崩れるなど、約2千万円の被害が見込まれる。ほかに常陸大宮、水戸、小美玉、大洗など11市町村でも被害を確認した。

農地は常陸大宮、小美玉、茨城など6市町で河川があふれ、田畑が冠水するなど9500万円の被害。農作物は水稲やサツマイモ、ジャガイモ、メロンが水に漬かるなどして、4市町で2395万円の被害額を見込んでいる。

■内水氾濫原因か

取手市双葉地区は、小貝川や牛久沼、水田や農業用水路などに囲まれ、約1100世帯のうち、約600世帯が床上・床下浸水した。地区に流れ込んだ水量が水路などへ排水するポンプの能力を上回り「内水氾濫」が起きたとみられている。今回、県内で唯一、災害救助法が適用された。

同地区にはポンプ場が2カ所設置され、当時は計5基のポンプが正常に稼働していたが、排水しきれなかった。市は週明けにも、排水のインフラ整備について県などに要望する予定。

同市の災害ボランティア受け入れは6日に始まり、これまで延べ300人が参加した。県は2021年9月、災害ボランティアの事前登録を始めており、災害活動について今回初めて登録者に呼びかけた。

被災地では水に漬かった畳や家具の運び出しや災害ごみの搬出など、作業は徐々に進んでいるものの、被災者の生活再建はまだ見通しは立っていない。

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