信用してくれますか

 どれぐらいの現実味なのだろう、「首相の胸のうち」がなかなか読めないのは毎度の話だが、21日の会期末が視界に入り始めた国会で衆院の解散がまことしやかに語られ始めている▲入管難民法の改正やLGBT理解増進法案などを巡る政府の対応を理由に、立憲民主党が内閣不信任決議案の提出を検討している-とされる。これに対し、与党幹部が「解散の大義になり得る」との見方を示したことなどから「解散風」がぐっと風速を増して…という構図のようだ▲ただ、衆院の勢力を見る限り、不信任案は、仮に提出されても「粛々と否決される」ことになる。そんな不信任案を理由に衆院を解散しようというのなら、真っ先に思いつくのは「逆手に取って」という言葉だ▲ところで、衆院解散の際の決まり文句の「国民に信を問う」について、作家の原田マハさんは、小説「総理の夫」の中で、日本初の女性首相・相馬凛子に「私を信用してくれますか? って国民に本気で問いかけること」と語らせている▲さて岸田首相。サミットやコロナの5類移行で支持率に持ち直しの兆しが…と思ったら、公邸の親族写真が批判を浴び、マイナカードはぐちゃぐちゃの混乱▲私を信用してくれますか、と本気で聞く自信はあるだろうか。いま問われたらどう答えようか。(智)

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