吉田修一の文庫最新刊は、悪と欲望を描き尽くした"極限の黙示録"『湖の女たち』──映画公開も間近な話題作!

作家・吉田修一の『湖の女たち』の文庫版が株式会社新潮社より7月29日に発売される。 本作は週刊新潮に連載された当時から、介護施設で起きた事件を捜査する刑事と施設で働く女が陥るインモラルな関係、そして事件の背後に見え隠れする現代社会の矛盾を抉り出すスケールの大きさが反響を呼んだ。 文庫版では画家の諏訪敦が解説を寄稿している。 ほの暗い欲望と悪を描き尽くした「極限の黙示録」ともいえる本作は、福士蒼汰、松本まりか主演で映画化が決定している。メガホンをとるのは『さよなら渓谷』以来のタッグとなる大森立嗣。モスクワ国際映画祭を受賞し、主演の真木よう子が日本アカデミー賞最優秀主演女優賞などに輝いた傑作以来の組み合わせが実現する(11月全国公開予定)。詳しくは特設サイトをご覧いただきたい。

本書に寄せられた賛辞

本書には単行本刊行以来、各界や書店から賛辞が寄せられている。以下、その一部を紹介しよう。

サディスティックな筆致に陶然とさせられた。──中野信子(脳科学者、医学博士)

胸の奥が疼いている。ものすごい小説を吉田修一は書いた。──大森立嗣(映画監督)

覚悟して読んでほしい。すごいめにあうから。──ジュンク堂書店滋賀草津店・山中真理

あらすじ

湖畔の老人介護施設「もみじ園」で、寝たきりの男性が人工呼吸器を外されて殺された。捜査にあたった刑事は施設で働く女性と出会うが、極限状態の取り調べの中で、二人はいつしかインモラルな関係に溺れていく。もっと最低なことをして、もっと汚してほしい……。一方、事件を取材する週刊誌記者は、死亡した男性がかつて旧満州ハルビンで人体実験にかかわっていたことを突きとめる。やがて警察の腐敗も浮かび上がるが、編集幹部からは突然、取材の中止を命じられるのだった。一体誰が意識もまばらな寝たきりの老人を、あざ笑うかのように死なせたのか? 吸い寄せられるように湖に集まる男たち、女たち、そして──。圧倒的な自然が悪も善も美もすべて呑み込んでいく結末に、読後あなたは言葉を失う! 悪と欲望を描き尽くした極限の黙示録。

【著者略歴】

撮影 新潮社写真部

長崎県生まれ。法政大学卒業。1997(平成9)年「最後の息子」で文學界新人賞。2002年『パレード』で山本周五郎賞、同年発表の「パーク・ライフ」で芥川賞、2007年『悪人』で大佛次郎賞、毎日出版文化賞を、10年『横道世之介』で柴田錬三郎賞、19年『国宝』で芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞を受賞。ほかに『長崎乱楽坂』『橋を渡る』『犯罪小説集』『逃亡小説集』など著書多数。2016年より芥川賞選考委員を務める。映像化された作品も多く、『東京湾景』『女たちは二度遊ぶ』『7月24日通り』『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』『怒り』『楽園』『路』『太陽は動かない』に続いて『湖の女たち』が映画化され、2023年11月全国公開予定。

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