「稼げる漁業モデル」を模索 滋賀・大津で漁業体験や芸術家受け入れ

漁業体験や芸術家の受け入れなどさまざまな活動に取り組む駒井さん。事務所兼自宅の前には青い空と琵琶湖が織りなす美しい風景が広がっていた(大津市八屋戸)

 琵琶湖で漁業の世界に飛び込んで約6年。駒井健也さん(30)=滋賀県大津市八屋戸=は漁師として独り立ちを果たし、漁業体験事業や、料理人らとコラボレーションしたレストランの出店など活動の幅を広げている。

 漁師を志すきっかけは滋賀県立大時代にさかのぼる。建築に関心があって進んだが、環境に配慮したデザインを学ぶ中で、山と里、琵琶湖の密接なつながりを知った。沖島では、漁業というなりわいが形作ってきた景観に衝撃を受けた。

 「この風景がいつまでも続いてほしい。そのためには漁師の仕事が成り立たないとダメだ」。自らが「稼げるモデル」になることを目指し、大学院在学中から担い手を育成する県の研修に参加した。

 3年前に独立すると、「フィッシャーアーキテクト」の屋号を掲げてアイデアを形にするため動きだした。新型コロナウイルス禍など逆風もあったが、「事業として成り立たせるため、一つずつ積み上げる準備期間になった」と振り返る。

 活動は大きく三つの分野に分かれる。食の分野では県内各地のマルシェなどに出張し、新鮮な湖魚を販売する。体験事業では、漁を終えた後の食事も含めたコースを設定し、修学旅行生などの利用もあったという。

 「BIWACO-WORKS(琵琶湖とともにある仕事)」と銘打った活動の源泉は、人との縁だ。昨夏初めて実施した芸術家を受け入れる「アーティスト・イン・レジデンス」は、漁体験で訪れた美術家との出会いがきっかけだった。

 地元の料理人や農家とのつながりからは、規格外の野菜や流通が確立されていない湖魚の活用を目指すプロジェクト「ν-Bottom-Otsu(ニューボトムオオツ)」が誕生。今年4月、大津市の商業施設内に実店舗も開設した。

 湖畔の事務所兼自宅を改修し、交流拠点としての機能を拡充するため、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で資金集めも始める。「琵琶湖の暮らしを体験できる仕掛けを増やし、将来は水の都・ベネチアの様なにぎわいを生みたい」。夢を抱き、今日も湖と向き合う。

琵琶湖上で行われる漁業体験の様子(駒井さん提供)

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