“市民総記者”で共助へ アプリの活用促進で被害情報の共有進める磐田市【わたしの防災】

6月2日の記録的豪雨で大きな被害を受けた静岡県磐田市は民間企業と連携し、災害情報をデジタルで収集・発信することになりました。災害時、正確な情報を素早く届けるための仕組みづくりが進んでいます。

こちらの動画は6月2日、磐田市の敷地川の氾濫の様子を訴えるツイートにあった動画です。衝撃的な映像は瞬く間に1100ほどリツイートされ、磐田市にも届きました。

この動画を撮影したのが敷地川の近くに住む栁沢重博さんです。

<栁沢重博さん>

「まさにここです。これを撮っている人がいなかったんですよ。こんな瞬間を写せるのはそうないので、これは貴重なものを撮ったと思って。安全を確保しながら、それでもリアルタイムで撮って、それがいつかどこかで役に立つのかなと思って」

災害時、SNSは重要な情報を素早くキャッチできる可能性を秘めています。この力を有効活用しようと磐田市が民間企業とタッグを組むことになりました。

6月12日、磐田市とJX通信社が結んだのが、防災のための情報収集・発信のデジタル化に関する協定です。こうした協定は全国で5例目、県内では初めてです。活用するのはJX通信社が2017年から運用する速報ニュースアプリ「NewsDigest」。2022年4月から災害の投稿システムが追加されました。

<JX通信社 米重克洋代表>

「NewsDigestを起動して、災害や事故を目撃したら情報提供ボタンを押す。陥没や浸水を選んで、地図で正確な場所を選び、報告をしていただく。写真や動画を追加で報告もできます。防災SNSというか…」

「NewsDigest」で住民が被害状況を投稿すると、JX通信社がAIを活用して収集・解析したうえで、投稿にあった情報を集約。磐田市は企業向けの速報システム「FASTALERT」で集約された情報を、住民は「NewsDigest」で配信される情報を見ることができます。住民はアプリの使用で被害情報の発信と確認が両方できるという訳です。

磐田市は、22年9月の台風15号、そして6月2日の台風2号と前線の影響で記録的な大雨が続きました。磐田市は22年の台風の際、電話がメインの通報スタイルの在り方にもどかしさを感じたと言います。

<磐田市 草地博昭市長>

「私自身ツイッターやフェイスブックで情報収集していた。より効率的に市民の皆さんからの情報を取りにいくことができないかなと思っていたところ、こういう仕組みがあることを知り、導入することにしました」

そこで磐田市はまず、23年4月から「FASTALERT」を試験的に導入。6月2日の記録的豪雨では、道路の冠水や川の増水など住民による12件のSNSの投稿をこのシステムを通じて確認し、堤防が決壊した敷地川についてもいち早く状況把握できたということです。

カギとなるのは住民の投稿。投稿が行政による公助、自分の身を自分で守る自助、近所の人と助け合う共助のすべてにつながると「NewsDigest」の活用を呼び掛けています。

<磐田市 草地博昭市長>

「これからさらに市民の皆さんが『市民総記者』として情報発信していただくことによって市民の共助が進んでくると思います」

地域一体となった防災力の向上を目指します。

ただ、防災にSNSを活用と聞いて不安に思うのはフェイクニュースです。JX通信社は住民からの投稿を、過去のフェイクニュースを学んでいるAIで解析した上で、人の目でもダブルチェックすることで正しい情報を発信しているということです。

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