千羽鶴焼かれる

 緋色(ひいろ)、白、赤、紫、黄、青、緑、藍色(あいいろ)、桃色、そして虹色。色とりどりの紙で鶴を折る、という曲「千羽鶴」は被爆50年を機に、歌詞は公募で選ばれ、長崎市出身の大島ミチルさんが作曲した▲8月9日、長崎平和祈念式典の終わりに高校生が歌声を響かせるたび、胸を突かれる。例えば2番の歌詞。〈野の果てに埋もれし人に/黄色い鶴折りたたみ/水底に沈みし人に/青色の鶴を折る〉。苦しんで逝った人のために折り続ける、と▲五島市の女性は、80歳を超えても日々、ずっと鶴を折ってきた。20年以上、高校生平和大使に託し続け、折った総数は30万を超えた▲「平和って心の中にあっても言葉でうまく言えない。これが私なりの形」と、女性はかつて語っている。毎年、全国から長崎市に何百という千羽鶴が寄せられるが、その一羽一羽に命が宿ると言っても、決して言いすぎではあるまい▲きのう朝、爆心地公園の千羽鶴を燃やしたとして23歳の県職員の男が現行犯逮捕された。動機は何であれ、一つ尋ねたいことがある。それを折った人々の、命を吹き込まれた折り鶴の、悲鳴が君には聞こえたか▲「千羽鶴」の歌詞にある。〈平和への誓い新たに/緋の色の鶴を折る〉。悲しく、つらく、許し難い思いをしたとしても、美しい鶴に込める心を忘れまい。(徹)

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