ポール・マッカートニー、“ザ・ビートルズ最後のレコード”をAIの力を借りて完成させたと明かす

結成から60年以上経った今、ポール・マッカートニーが、現代テクノロジーの奇跡により、ザ・ビートルズの最後の楽曲が完成しつつあると語っている。英BBC Radio 4の『Today』に出演したポールは、タイトル未定の楽曲を完成させるために、人工知能を使って古いデモ音源から故ジョン・レノンの声を取り出したと明かした。

1978年にジョンが作曲した「Now and Then」かもしれないとBBCが推測したタイトル未定の楽曲について、ポールは、「ちょうど完成したところで、今年リリースされるよ」と述べている。このシングルは、1995年の『ザ・ビートルズ・アンソロジー』シリーズの“再結成曲”としての候補に挙がっていたそうで、この中にはグループ解散後にジョンが録音したデモをもとにした新曲2曲、1995年の「フリー・アズ・ア・バード」と1996年の「リアル・ラヴ」(ELOのジェフ・リンがプロデュース)が含まれていた。これらの楽曲は、25年以上ぶりにリリースされたザ・ビートルズの“新曲”だった。

ポールは1994年にジョンの未亡人であるオノ・ヨーコから新曲のデモを受け取ったとされる。この楽曲は、ジョンが1980年に殺害される直前に作った“For Paul”と書かれたカセットに収録されていた数曲のうちのひとつだった。BBCは、これらの楽曲は“ローファイで胎動的”なもので、ほとんどがジョンが米ニューヨークのアパートにあるピアノでラジカセを使って録音したものだと報じている。

BBCによると、『アンソロジー』発売の頃、ジョン以外のメンバーがこの“申し訳なさそうな”ラブ・ソング「Now and Then」を録音しようとしたが、すぐにセッションを放棄した。ELOのジェフ・リンは、「ある日……実際はある日の午後だね、それをいじっていたんだ。この曲にはコーラスはあったが、バースがほとんどなかった。バッキング・トラックを作ったけれど、ラフなもので完成させなかった」と当時を振り返っている。

ポールは後に、ギタリスト兼シンガーの故ジョージ・ハリスンが「Now and Then」の作業を拒否し、ジョンのボーカルの音質が「ゴミのようだった(と言った)......ジョージは気に入らなかった。ザ・ビートルズは民主主義だから、やらなかったんだ」と説明した。 オリジナルの音源には技術的な問題があり、ジョンのアパートの電気回路からのしつこい“ブーンという音”が原因だったとBBCは伝えている。2009年に発売されたブートレグCDには、このノイズを取り除いた新しいバージョンのデモが収録されていたという。

BBCによるリンに関する2012年のドキュメンタリーで、ポールは、「あの曲がまだ残っている……だから、ジェフと一緒に(スタジオに)ちょっと入ってやるつもりだ。そのうち完成させるよ」と述べていた。新曲が「Now and Then」であるかはまだ明らかにされていないが、BBCによるとピーター・ジャクソンのドキュメンタリー・シリーズ『ザ・ビートルズ Get Back』の制作中に採用された技術の進歩により、ダイアログ・エディターのエミール・デ・ラ・レイがコンピューターを訓練してザ・ビートルズのメンバーの声を認識させ、彼らの楽器を含む背景雑音から分離し、“クリーン”なオーディオを作成できた。この技術により、ポールは最新のツアーでジョンとバーチャル・デュエットをすることができた。

Radio 4に対しポールは、「(ジャクソンは)質の悪い小さなカセットからジョンの声を引き出すことができた」と、ドキュメンタリーで使われた技術がいかに“新曲”の制作に役立ったかを説明した。「ジョンの声とピアノ(の音)があって、AIでそれらを分離することができた。機械に“これが声だ。これはギターだ。ギターをなくしてくれ”と指示するんだ。だからザ・ビートルズ最後のレコードになるものを作ることになった際、ジョンが持っていたデモだったんだけど、このAIを通してジョンの声を取り出して純粋なものにすることができた。あとは通常と同じようにレコードをミックスすることができる。だからある種の自由裁量を得られたんだ」と彼は述べている。

現時点でこの“ザ・ビートルズ最後のレコード”のリリース日はまだ発表されていない。

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