【リニア】知事「どちらの水か議論しない」 主張一転の真意は…(静岡県)

リニア新幹線をめぐり、山梨側でのボーリング調査に反対している川勝知事は、6月13日、調査で出た水は「どちらの水かという議論はしない」と発言した。これまでの主張を一転させるかのような発言の真意はどこにあるのだろうか?

山梨県側で進む「ボーリング調査」をめぐり、静岡県は「山梨側での調査においても、静岡側の水が流れ出る可能性がある」として、JR東海に対し、県境まで300メートル以内の区間を掘り進めないよう求めている。

今回、議論となってきたのが「山梨県側の調査で出た水が、山梨と静岡、どちらの水なのか」。県の専門部会でも、これまで長い時間をかけて議論が行われてきた。こうした中、13日、県の森副知事は山梨県庁を訪れ、静岡県の立場を説明したが、山梨県の長崎知事は「山梨県で出た水は山梨のもの」と改めて主張した。

(山梨県 長崎知事)

「(静岡の)懸念もよく理解できる、静岡の水、山梨の水だという議論は我々としては受け入れがたい、このことははっきり申し上げた」

水をめぐる議論が過熱する中、13日の会見で、川勝知事は「どちらの水かという議論はしない」とこれまでの主張を一転させた。

(記者)

「山梨県で出た水を『静岡県の水だ』という主張はしないということでしょうか」

(川勝知事)

「しません、水について行政的な単位を言うのは向かないと考えています」

その一方で、「ボーリング調査の中止要請は撤回しない」とした上で、調査の可否は「県の専門部会の判断を尊重する」と話した。

(記者)

「静岡県に水を戻すという発想にならないと思うが」

(川勝知事)

「静岡県に供給される水は、山にある水がめから供給されている、これについては非常に深い懸念と心配をしている」「これについての懸念を払しょくする義務は事業主体(JR東海)にある」「県の専門部会で納得して、部会長の方針としてこうすると言われれば、専門家の意見を尊重して我々はそれに従う」

これまでの主張を一転させた川勝知事。「どちらの水か議論しない」との発言の真意はどこにあるのか?元県職員で県内の政治・行政に詳しい静岡産業大学の小泉教授は、「JR東海より山梨県との関係に配慮した結果」だと話す。

(静岡産業大学 小泉祐一郎 教授)

「山梨県との間で不協和音みたいなものが出てしまったというのが一番」「山梨県との関係では、何か課題があって議論する関係にはない、水の所有権の話になってしまうと微妙な問題で、山梨県としても水の所有権の問題に発展するような話になると見過ごせないところがあったと思う」

山梨側のボーリング調査について、県は“容認”せざるを得ない状況になっていると話す。

(静岡産業大学 小泉祐一郎 教授)

「ボーリング調査の件は全体としてはそんなに大きな話ではない、そこではない」「ボーリング調査については、容認できる範囲になるのではないかと思う」「全体の流れとしては、知事はこだわっていたけど、専門家からすると、そこにそんなにこだわる必要ないのではないかとなると、知事としても自分だけがこだわっていても、科学的なバックアップが得られなくなってしまう」「ここで争う場面とは違うという理解がされてきたのかな」

一方、川勝知事の今回の発言について県の幹部はDaiichi-TVの取材に対し「調査で出た水の所有権については議論しないという意味であり、真意が伝わりにくかった、ボーリング調査の容認についてまだ課題が残っているという認識だ」と話している。

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