「過去50年で予約が1番多い」うれしい悲鳴のはずが…富士山“入山規制”検討の動き 泊まる山小屋なく弾丸登山懸念

富士山の登山シーズンが7月から始まります。新型コロナの規制が解除され、登山者の増加が見込まれることから、静岡県内でも入山規制を検討する動きがみられています。

<金原一隆記者>

「行動制限などがない夏山シーズンをこれから迎える富士山。安全な登山のために、山に入る人の数の制限を検討するべきという声が高まっています」

富士山では、山梨県側の登山道が7月1日から、静岡県側の登山道が7月10日から開通し、山開きを迎えます。6月14日の富士宮口5合目にはポツリポツリと人の姿が…。

<東京から来たグループ>

「夏に予定している富士登山の下見をしたいなと」

Q.久しぶりですか?

「いやいや毎年お世話になっています。91歳の方をお連れするので、その下見に」

こちらは…。

<東京から下見に来た別のグループ>

Q.富士登山は今回で何度目ですか?

「私は初めてなんです。私は視力が全然ないんです。富士登山はあきらめていたんですけど、連れて行ってくださるということで」

2023年は新型コロナの規制解除の影響で登山者の増加が見込まれています。一方、十分な休憩をとらずに登る「弾丸登山」によるけが人や病人の増加も懸念されているのも実状です。

こうした状況を防ごうと山梨県では6月12日、山梨県の富士吉田市長などが山梨県庁を訪れ、富士山の夜間の入山者が一定数を超えるなど危険が察知された場合に、一時的な入山規制を行うことなどを求めた要望書を手渡しました。

静岡側の登山口特有の懸念もあります。

<金原一隆記者>

「富士宮口5合目のレストハウスは火事に遭ってからまだ復旧できていません。登山客の増加が見込まれる中、休憩施設もトイレも足りない状態のままです」

こういった状況を踏まえ、静岡県内でも富士宮市や富士市、山小屋の運営者などが集まる協議会の中で、入山規制を検討するべきといった話があがったということです。協議会で入山規制の検討を提案した山小屋の関係者は…。

<富士山表富士宮 富士登山組合 山口芳正組合長>

「今年は各山小屋がほとんど平日は満室状態。(これ以上)多くのお客さんに来てもらっても宿泊先がない」

協議会の中で山小屋の関係者からは「今年は過去50年の中でも予約が一番多い」といった発言もあったということです。

富士山の登山者数の推移ですが、新型コロナの影響で2021年と22年はコロナ前よりも登山者数が少ない状況でした。しかし、23年は、新型コロナが5類に移行されるなど、登山者数がコロナ禍前の水準、もしくはそれ以上になる可能性もあります。安全に登山シーズンを乗り切るための模索が続いています。

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