リベンジ婚相場はくるのか−−ウエディング業界で生き残るための鍵は?

最近、”結婚”という嬉しいニュースがたびたび入ってくるようになりました。コロナ禍では、結婚式を挙げたくても挙げることができず、キャンセルしたり延期したりと、つらい決断をしたカップルも多かったと聞きます。

その苦難の時期を乗り越え、なんの制限もなく結婚式を挙げられるとなれば、2023年はリベンジ婚相場がやってきてもよいのではないかと考えています。

実際の婚姻数の推移を見てみると、婚姻数は減少傾向となっています。コロナの影響をいちばん受けたのは2021年なので、そこからみると回復傾向にはありますが、コロナ前の数字にはまだ届いていません。

<婚姻件数>
2017年 606,952組
2018年 586,481組
2019年 599,007組
2020年 525,507組
2021年 501,138組
2022年 504,878組
出典:厚生労働省「令和4年人口動態統計の年次推移」

そもそもコロナ前から、婚姻数は減少しており、2010年までは、700,000組以上のカップルが誕生していましたが、それ以降、右肩下がりです。国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2022年版)」によると、2020年の「50歳時の未婚率」は男性が28.25%、女性は17.81%、つまり男性の約3割、女性の約2割が結婚しておらず、しかもこの数字は年々上昇傾向にあります。

となると、直近でのリベンジ婚は期待できても、長期的にはウエディング業界の未来はけして明るくはないのでしょうか?


実際リベンジ婚は来てるのか?

ハウスウエディングのパイオニアであるテイクアンドギヴ・ニーズ(4331)の決算短信を見てみましょう。

画像:テイクアンドギヴ・ニーズ「2023年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

2023年5月12日(金)に発表された2023年3月期決算は、①売上高45,532(百万円)、②前年同期比+15.3%、③営業利益3,681(百万円)、④前年同期比+76.2%と大幅増収増益です。

決算説明資料によると、ウエディングの①取扱組数624組増加、②平均単価188千円増加、③平均人数6.5人増加とすべての項目で前年比でプラスとなっています。

画像:テイクアンドギヴ・ニーズ「2023年3月期決算説明資料」より引用

決算説明資料の右横に掲載されている、2021年3月期からの売上高・営業損益推移を見ても堅調に回復基調であることがわかります。しかし、コロナの影響をまったく受けていない2019年3月期と比べてみると売上高、取り扱い組数、平均単価、平均人数すべて届いていません。

画像:公開資料をもとに筆者作成

新年度である2024年3月期に向けての受注残組数は、前年同期比90.3%で、少し鈍化気味です。コロナで大きく凹んだ影響で、V字回復しつつあるものの、ウエディング市場全体の停滞が、上昇の勢いを抑え込んでいるようです。

画像:テイクアンドギヴ・ニーズ「2023年3月期決算説明資料」より引用

コロナ禍で広がったフォトウエディングは?

市場自体がシュリンクする中で、逆に拡大しているのが、フォトウェディングです。コロナ禍で結婚式はできないけれど、せめてプロのカメラマンに一生の記念となるウエディング写真を、と撮影するカップルが急増しました。

フォトウェディングサービスを主軸事業とする、デコルテ・ホールディングス(7372)の決算を確認してみましょう。

画像:デコルテ・ホールディングス「2022年9月期決算短信〔IFRS〕(連結)」より引用

2022年11月4日(金)に発表された2022年9月期決算は、①売上高5,322(百万円)、②前年同期比+15.9%、③営業利益1,377(百万円)、④前年同期比+58%。対象期間は、2021年10月1日(金)から2022年9月30日(金)なので、コロナ禍の真っ最中です。前期2021年9月期の営業利益も⑤前期比109.2%と倍以上の伸びなので、コロナ特需が追い風だったと考えられます。この流れはアフターコロナでも続くのでしょうか?

直近発表された2023年9月期第2四半期決算の決算説明書によると、結婚式を行わない「ナシ婚」層の増加にともなって、写真だけは「撮る」婚が増加傾向にあります。

画像:デコルテ・ホールディングス「2023年9月期第2四半期決算説明資料」より引用

同社は、このナシ婚層の取り込みをはじめ、たとえば「旅行×フォトウエディング」や、「家族×フォトウエディング」など、フォトウエディングにプラスαのサービスを提供することで、さらなる市場開拓を進めていく計画です。

このようにウエディングニーズは多様化しており、婚礼数は減少するものの工夫次第で伸びていく企業もありそうです。

ウエディング業界で生き残りの鍵は?

婚礼数が減少する中で、従来通りのウエディングサービスを提供するだけでは生き残れないウエディング業界。最近は、アパレル企業など異業種からの参入もあり、ますます競争は激化しています。今後、生き残りの鍵となるのは、いかに魅力あるウエディング+αを提供できるかでしょう。

たとえば、テイクアンドギブ・ニーズは、ブティックホテルと呼ばれる小粒で個性あるホテルの運営に力を入れています。わたしは、当社が運営する渋谷のTRUNK ホテルのラウンジをよく利用しますが、オシャレでとっても居心地がよい空間で、施設内にあるオープンテラスのレストランでウエディングなんて素敵だろうなぁと妄想してしまいます。

株価は、リベンジ婚期待で2021年前半から2022年上期まで上昇基調でしたが、その後、失速しています。

画像:TradingViewより

コロナ前に売上利益が回復していないことが、投資家には歯がゆいのでしょう。折りしも6月ですから、ジューンブライド復活を期待して、次の決算を待ちたいところです。

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