戦前のドイツ社製ピアノ、竹田市で活用へ 大分市の尾登さんが寄贈【大分県】

日本に数台しか確認されていないスタインベルク・ベルリン社のグランドピアノを寄贈した尾登憲治さん=大分市神崎
グランドピアノに記された「スタインベルク・ベルリン」の社名

 【竹田】日本では数台しか確認されていない戦前ドイツにあった「スタインベルク・ベルリン社」のグランドピアノが、竹田市の城下町で活用されることになった。同市の元地域おこし協力隊員で映像作家の尾登(おとう)憲治さん(73)=大分市神崎=が寄贈。今年は竹田で少年時代を過ごした作曲家滝廉太郎の没後120年に当たり、関係者は「音楽あふれるまちづくりの核になれば」と期待する。

 スタインベルク・ベルリン社のピアノを所有する長野県佐久穂町などによると、同社は著名ピアノメーカーのスタインウェイ社から独立した職人らで1908年に創業。第2次世界大戦中の40年に倒産し、製造期間はわずか32年間だった。

 尾登さんのピアノは、兵庫県で高校の音楽教師をしていた兄が約50年前に中古で購入。転勤に伴い大分市神崎の実家へ送られた。病気で81年に亡くなった妹フミさん(享年29)が生前、入退院の合間に弾くなど思い出が詰まった一台だが、両親が亡くなった実家を引き払うのに当たり、引き取り手を探すことにした。

 「このピアノの良さを理解してもらえる人に譲りたい」と協力隊当時、竹田市長だった首藤勝次さん(69)に相談。首藤さんが理事長を務める市健康と温泉文化・芸術フォーラムが譲り受け、同市を拠点に活動するTAKETA室内オーケストラ九州の「城下町音楽交流サロンKOKORO」(市内竹田町)で活用することになった。

 20日に搬入の予定。尾登さんは「重厚な音で現代のものと響きが違う。音楽を志す人らに弾いてもらいたい」。首藤さんは「日常に音楽が響くまちになるきっかけにしたい」と話した。

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