●創業73年 旅館廃業、雪で再建断念
●アユ、山菜料理を継続
今年1月の大雪で倒木被害に遭った末町の温泉旅館「滝乃荘」が16日、73年続いてきた旅館業をやめ、飲食店として再出発する。新鮮な川魚や山菜を使った料理が人気で、常連客らの存続を求める声を受け、浴場を備える別館を取り壊して飲食業だけで続けることにした。アユ釣り解禁に合わせたリニューアルで、店主は「これからも地元のおいしい山川の幸を味わってほしい」と意気込んでいる。
滝乃荘は1950(昭和25)年に創業した。犀川上流に位置し、裏手にある高さ約15メートルの滝が名物だった。犀川で捕れたアユの塩焼きや山菜の天ぷらなどを提供し、宿泊客や地元の団体客らに好評だった。店主の城力一生さん(65)ら家族3人で経営する。
倒木は1月28日朝に発生した。旅館横の斜面から高さ20メートルの木が倒れ、浴場や客室が入る木造2階建ての別館を押しつぶした。けが人はいなかったものの、安全のため宿泊予約の受け付けをやめ、別館は解体せざるを得なかった。
その後、地元住民や県外の常連客から心配する声が相次いで寄せられ、地元消防団も支援の気持ちを込めて食事に来た。女将(おかみ)の幸恵さん(56)は友人から「きれいになったら、『応援同窓会』を開くからね」と呼び掛けられたという。
浴場のない状態での旅館営業は難しく、城力さんは廃業を検討していたが、「支えてくれた人に恩返しするため、もう少し続けよう」と思い直した。再出発に向け、本館にある客室5室を食事用の個室として改装した。8月には再開記念のイベントも検討している。
別館が撤去されたことで敷地裏手の滝が見やすくなった。城力さんは別館跡を庭園に造り替える青写真を描き、「滝を見て食事できる場所とし、旅館業をやめた滝乃荘に新たな魅力をつくりたい」と話した。