「黒い雨」巡り抗議文 長崎県保険医協会「首相は地元びいき」

 長崎県保険医協会(本田孝也会長)は15日、国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」の早期救済などを求めた岸田文雄首相宛ての抗議文と、鈴木史朗長崎市長への要請文を提出した。同日付。
 岸田首相への抗議文は、広島の「黒い雨」被害者が被爆者認定された一方、長崎の体験者が対象外となっていることに対し「(岸田首相の)地元広島の住民は救済し、長崎の住民は対象外とするのはあまりにも地元びいき」と批判。速やかな被爆者健康手帳の交付を求めた。新型コロナウイルスの感染が急拡大した「第8波」の中、首相公邸で親族との忘年会を開いたことにも抗議した。
 鈴木市長への要請文では、県が専門家会議を設置し報告書を提出した一方で「市は厚生労働省に追随し、同様の見解を繰り返すのみ」と非難。5月に同協会が公開した黒い雨降雨地点などを示したデジタルマップを活用し、住民側に立った対応への転換を求めた。
 会見で本田会長は「被爆体験者は『今度こそ』と思いながら待っているのに日にちだけが過ぎている。一日も早い救済を求める」と語った。
 また本田会長は、1987年に県被爆者手帳友の会が東長崎地区で実施した調査の結果を、被爆体験者の集団訴訟の証拠として今年5月に提出したと明らかにした。調査では古賀、矢上、飯盛地区で被爆した309人の約6割が「黒い雨にぬれた」、9割近くが「灰をかぶった」と回答しており、降雨を示す有力な資料となるとみている。

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