ラッキーではない6-0の大勝は日本代表が続けたやるべきプレーの成果、ワンランク上のチームへの第一歩

[写真:Getty Images]

開始1分で先制、2分で相手が退場し、4分で2-0。ピッチ上の人数は11vs10という状況。エルサルバドル代表戦は、日本代表にとって、この上ないスタートとなった。

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試合の結果はご存知の通り6-0の圧勝。立ち上がり5分で決着がついたように見える試合だったが、それでもしっかりと戦い切れないのがこれまでの日本だった。しかし、この日は6ゴールを奪い、前半4点、後半2点。選手を入れ替え、新たな取り組みをした上での結果は、評価して良いだろう。

試合後、森保一監督は「選手たちの試合に懸ける思いが結果を良くしたと思います」とコメント。序盤のエクスキューズは、しっかりとチームが生み出したものだと振り返った。

ミックスゾーンでは三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)も「結果だけを見れば、相手が弱い、簡単だと言われることもあるかもしれませんが、そんなことはない」と語気を強めた。ラッキーが重なっただけの大勝劇ではない。

3月に新体制でスタートした森保ジャパン。ベテラン勢の招集を見送り、カタール・ワールドカップ(W杯)のメンバーからはケガなども含めて11名が呼ばれず。フレッシュな顔ぶれで臨み、新たなビルドアップやコンビネーションを試した中、ウルグアイ代表、コロンビア代表を相手に勝利を掴めなかった。

そして迎えた6月。3月の反省を生かしたい中、選手たちの高みを目指す想いはより一層強くなっている。

新キャプテンに就任した遠藤航(シュツットガルト)は「世界一になるために活動してほしい」と選手たちに伝えた。森保監督も「選手たちが思ってくれていることは嬉しい」と、突破できていないベスト16の壁を越えることではなく、更なる高みを求めて活動できることを喜んでいた。

口で言うことは簡単だろう。ただ、目標を達成するためにどう働きかけるのか。目標を達成できなくとも、成長や進化、ステップアップを果たすために、目に見えて変化を示す必要があった。

そこで迎えたエルサルバドル戦。前述の通り、エクスキューズがあったが、選手たちのパフォーマンスが落ちることはなく、自分たちにフォーカスしてプレーを続けられたことは評価すべきだろう。

先制点に繋がったFKは、左サイドでボールを受けた三笘が仕掛けたことで獲得できた。相手も当然警戒していた中で、ファーストプレーで特徴を出した三笘は「状況を判断して、スペースがあったので、上手くもらうことができました」とプレー選択の理由を語った。結果、それがゴールに繋がった。

アシストを記録した久保建英(レアル・ソシエダ)は「ここのところ良いフィーリングでセットプレーを蹴れていた」と、FKのキッカーを旗手怜央(セルティック)に志願。「角度的にもここはファーなんじゃない」(旗手)という言葉を受けてクロスを上げ、谷口彰悟(アル・ラーヤン)の日本代表初ゴールを生み出した。

そして2点目に繋がったプレー。結果として相手を退場に追い込み、PKで追加点を奪えたが、その前の相手陣内でのプレスが全てだった。

ゲームキャプテンを務めた守田英正(スポルティングCP)は、「自分たちが良い形でプレスをかけて前から嵌めていった結果」と退場に追い込んだプレーを振り返り、「ポジティブに自分たちにとって良かったと捉えています」と11vs11の試合ができなかったことを残念がりながらも、徹底できたプレスがよかったと振り返った。

3点目の久保のゴールについて、アシストした三笘は「狙っていた」と切り替えの部分を狙ったとコメント。その三笘が持ち出してミドルシュートを放ったこぼれ球を決めた堂安律(フライブルク)は「ごめんしかないです笑」とごっつぁんゴールだと認めながらも「こぼれて来ることは意識していた。ラッキーではない」と、インサイドハーフとしての役回りと試合の流れを見ての判断が生んだものだと振り返った。

エルサルバドルのウーゴ・ペレス監督は「最初の3分でこの試合の展開がほぼ決まった」と試合の入りを嘆いた。本来であればハイプレスとポゼッションで対抗したかったと語った監督だが、そうはさせないキックオフからの集中力が全てだった。

FIFAランキングを見れば、エルサルバドルの方が確かに下に位置している。三笘の言葉のように、相手が弱かった、人数が違ったなどということは簡単だが、日本だって集中力を失う可能性もあった。それでも、6ゴールを奪って勝ち切ったことは評価できる。

得点には絡まなかったが、インサイドハーフでフル出場した旗手は圧巻のパフォーマンスを見せた。守備を支え、バランスを取り、ボックス内にも積極的に入った。影のMVPと言って良いパフォーマンスを見せたが、代表での2試合目ということを忘れてはいけない。

後半開始から起用され、久保のお膳立てからゴールを決めたFW中村敬斗(LASKリンツ)も代表2試合目。ほぼデビュー戦という状況で、左サイドで攻守に躍動した。時間は短かったが、25分間プレーしたMF川辺駿(グラスホッパー)はちょうど2年ぶりの代表戦出場に。オフ・ザ・ボールの動きは秀逸で、バランスを取り、強度を保ってチームの中盤を支えた。追加招集し、合流から24時間後に日本代表デビューしたMF伊藤敦樹(浦和レッズ)も慣れないポジションで力を発揮した。“ホーム”で日本代表デビューしたDF森下龍矢(名古屋グランパス)も同様だ。まだまだ世界との差、経験の差はあれど、がむしゃらにプレーした。積極的な攻撃参加を見せ、持ち味を見せつけたと言える。

森保監督が語った「試合に懸ける思い」を、しっかりとピッチで表現し、相手の状況に関係なく、自分たちが求めるパフォーマンスを出し切った日本。「伊東純也選手にももっと取れただろと言われたし、前半2~3回取れたシーンがあったのでそこは悔やまれますね」と久保が語ったが、もっとできたという反省点を次のペルー戦にどう生かすのか。大勝したからこそ、ディテールに目を向けて反省は必要だが、ピッチ上のパフォーマンスでまず示したことは素直に評価すべきだろう。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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