稲田朋美氏、LGBT法は「“インフラ整備”の法律」 法成立の意義、国会で話題の女性施設の議論は…独自インタビュー

LGBT理解増進法の成立を「感慨深い」と話す稲田氏=6月16日、衆院第2議員会館

 LGBTなど性的少数者への理解増進法が成立したことを受け、自民党政調会長時代の2016年に党内に「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設置し取り組みを進めてきた稲田朋美衆院議員が6月16日、福井新聞のインタビューに応じた。「性的少数者の問題はイデオロギーでなく、基本的人権の問題。全ての人が大切にされる社会をつくる法律だ」と述べた。

この法律の意義は。 「性的少数者に関連する初めての法律。ただ急進的な内容ではなく、さまざまな課題を議論をするための理解を深めるという、いわば“インフラ整備”の法律だ」

 「これまでは、当事者が自殺を考えるような困難を抱えていても、国に訴える場所がなかった。今回内閣府に担当部署ができるのは非常に大きい。当事者でない人たちの不安の受け皿にもなる。国が指針をつくることにもなっており、これから取り組みを進める地方公共団体の参考にもなるだろう」

今国会では、稲田氏も中心的に関わった21年の超党派合意案が修正され、与党案として提出された。立憲・共産案、維新・国民案と計3案が並び、さらに自公が維新・国民案を受け入れる形で「与党修正案」が成立した。 「ジェンダーアイデンティティと性自認、性同一性は同じ意味で、どの案も2年前の合意案を少し修正した内容で核の部分はほぼ一緒。多くの人に賛成してもらえる修正が望ましいという気持ちだった」

法律制定の過程で「女装した男性が女子トイレや女湯に入ってくる」などの不安が広がった。 「法律に反対する立場の人たちの飛躍した考えだ。国会でも何度も答弁があったが、そうした女性の権利侵害は起こらない」

一方でその不安に応える形で多数者に配慮するよう「留意事項」を加えたことで、今後は少数者から「むしろ差別を助長する」との批判が上がった。 「女性専用施設の議論で少数者の人たちを傷つける言動があったことも一因だ。ただこの法律は元々、性的少数者を含む全ての国民の人権を守る内容だ。留意事項は当たり前のことを記述しただけで、少数者の権利が多数者の理解の範囲内でだけ認められるというような趣旨ではない。超党派議連などで説明していかなければならない」

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特命委設置から法律成立まで7年超かかった。 「子どもの知り合いや支援者の家族に当事者がいて、身近な問題だったこともあり特命委をつくった。ただ当時は党内に性的少数者の議論はなく、法律をつくるのは困難な道のりだった。感慨深い」

同性婚などの規定を求める司法判断が相次ぐなど社会の意識も変化した。 「同性婚自体は、民法が想定している家族制度を大きく変えるもので、慎重に考えるべきだ。ただパートナーシップ制度を法的に認めるなどの選択肢もあり、影響を含めて議論を始めるべきだと考えている」

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