長崎県佐世保市で初めて、新卒で地域おこし協力隊に採用された宇戸莉央さん(23)=宮崎県出身=が着任1年を迎えた。担当は離島の黒島と高島。宇戸さんは「キャリアがない自分に何ができるか不安だったけど挑戦して良かった」と笑顔を見せる。
小さい頃から地図を見ることが好きで、大学では宗教地理学を専攻した。観光業界を目指し就職活動を始めたが、3年時の2020年はコロナ禍真っただ中。観光業界の募集は軒なみ無くなった。
そんな中取り組んだ卒業論文では、父親の出身地である新上五島町の「キリスト教と仏教」をテーマにした。調査で現地を訪れると街並み形成に宗教が影響する環境や、長崎の人の温かさに引かれたという。
他方で黒島、高島の地域おこし協力隊の募集を知ってはいたが「キャリアがない新卒の自分には無理だろう」と踏み出せずにいた。しかし知人の「今の協力隊はSNSに強い人材を求めてると思う」との言葉に背中を押され、「それなら私もできる」と応募を決意。面接などを経て2022年4月に就任した。
以降、黒島の観光拠点「黒島ウェルカムハウス」に勤務しながら、情報発信や観光ガイドなどを担当。得意のものづくりを生かして、黒島天主堂のバラ窓をモチーフにしたキーホルダーなど担当地域のお土産の製作、販売にも挑戦し、少しずつ自分にしかできない地域おこしの道を開拓している。同拠点責任者の山内登美枝さん(68)は「輝く若さで場を明るくしてくれて感謝。情報発信も上手で感心している」と穏やかな笑顔で話す。
黒島に住む宇戸さんにとって、島の魅力はゆっくり流れる時間と、そんな中で味わう、美しい島の光景や汽笛の音、人の温かさだという。宇戸さんは「島の方たちには本当に支えていただいている。2年目の今年は島の人と一緒に楽しめるイベントを企画して、未熟な自分なりにガッツを持ってさらに島を盛り上げていきたい」と目を輝かせた。