関西最後の秘湯「鍬渓温泉きすみのの郷」、開館5年で入浴5万人 疾病に効く冷泉、440年の歴史

隠れ家のような魅力がある湯船=小野市下来住町、鍬渓温泉きすみのの郷

 約440年の歴史を持ち、「関西最後の秘湯」とも言われる兵庫県小野市下来住町の「鍬渓(くわたに)温泉きすみのの郷」の入浴者が、2018年5月の開館以来、延べ5万人に達した。節目に訪れた田中覚(さとる)さん(71)=同市=に花束や入浴券が贈られた。(坂本 勝)

 塩分を含み「塩の井」とも呼ばれる温泉は1582(天正10)年に湧き出し、疫病に効く冷泉として語り継がれてきた。大正初めには播州鉄道(現JR加古川線)開通に伴い、温泉旅館が軒を連ね、大勢の客でにぎわったという。

 1995年、地元老人会の集会場として平屋が建てられ、温泉好きの憩いの場として使われていた。2010年に閉館したものの、復活を望む声が多く、歴史ある源泉を後世に残そうと、観光交流施設としてオープンした。

 食事コーナーには、JR加古川線小野町駅にあるそば処「ぷらっときすみの」の2号店が入り、本格的な手打ちそばを味わえる。地元で栽培し、収穫したそば粉を使うそばは喉越しが爽やかで、風味や香りが良い。おふくろの味の巻きずしも人気がある。

 木々に囲まれた建物はこぢんまりとしており、浴場は男女とも6人しか入れない。

 5万人目となった田中さんは「穴場みたい。ゆっくり漬かると疲れが取れる」と魅力を語る。支配人の阿江治さん(72)は「若い人も増えてきた。隠れ家的な魅力を知って」と願った。

 午前11時~午後8時。600円(小学生300円)。火・水曜日定休。同温泉TEL0794.88.8426

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