行方不明の女子高生を保護、一緒にいた男女摘発…遠くの場所、いつも警察どう特定 無事発見され泣く家族も

防犯カメラ映像を確認するなどして、行方不明者の動きを予測する行方不明対策係の捜査員=さいたま市浦和区

 後を絶たない行方不明者。埼玉県警が昨年1年で受理したのは6421人で、前年比489人増と増加傾向だ。早期発見と保護へ、県警には人身安全対策課に不明者捜索を専門に行う「行方不明対策係」がある。事件や事故に巻き込まれる可能性もあることから捜査員はインプットした対象者の顔や服装、所持品などを頭に描きながら駅や繁華街で目を凝らし、全力で足取りを追う。表舞台に出ることはないが県警の屋台骨を支える縁の下の力持ちだ。

■32時間後に愛知で

 4月8日午後1時40分、県東部の警察署が10代の女子高校生の行方不明事案を認知した。捜査員らは届け出た家族からの聞き取りや防犯カメラ映像の解析などを速やかに進め、女子高校生が愛知県内のある駅周辺にいる可能性が高いことを割り出した。

 捜査員は同日夜中には捜査車両で愛知入り。夜を徹して再び防犯カメラ映像の収集、聞き込み、張り込み等の捜査を地道に続け、認知から約32時間後、捜査員が張り込んでいた駅構内で男=当時(19)=と女(19)と共に歩く女子高校生を見つけ、保護。男と女をいずれも愛知県青少年保護育成条例違反で摘発し、女子高校生を無事に保護者に引き渡すことができた。

■先入観は捨てる

 行方不明対策係は、基本的に2人一組で動くことが多い。男性警部補(38)と女性巡査部長(32)はそれぞれ同係が3年目と4年目。コンビを組んで3カ月ほどだ。

 心がけているのは先入観にとらわれないこと。常に重大事件に巻き込まれたり、最悪なケースに陥ることを想定し捜索に努めているという。対象者がいつ、どこから、どういう理由で、何を持って出て行ったかなどを聞き取り、道筋を立てる。早く正確に概要を把握すればするほど発見できる確率が上がるため、事件捜査と同じで初動が大事だ。

 捜す方向性が定まったら、防犯カメラを追っていき、交通手段などを絞る。防犯カメラの映像によっては二手に分かれ、可能性をつぶして少しずつ前進していく。未成年なら1人で写っているかどうかも重要な要素だ。基本的には車移動だが、北海道や九州に飛行機で向かうことも。泊まり勤務になることや長時間張り込むことも多々あり、発見できるまで気が抜けない。

■経験値と使命感

 男性警部補は対象者が結果的にどういうルートをたどっていたかなど自身の中で答え合わせを欠かさない。「憶測とどう違っていたのか、次への読みに生かす。経験値を上げることで取れる選択肢を増やし、保護できる確率を高めていきたい」

 女性巡査部長は相談者や不明者を自身の周りの人に置き換えて行動する。「警察官しかできない仕事をしている。何としても安全なまま引き渡たしたい」。やりがいを感じるのは被害に遭う前に確保できたり、無事に発見して待っていた家族が泣きながら抱きかかえている姿を見る時だ。

 同課によると、全体の傾向と同様で昨年の18歳未満の不明者も1098人で前年比で90人増加。最近の傾向として未成年者が交流サイト(SNS)やゲームアプリのチャット機能を通じて知り合った成人などの居宅に誘引されるケースが目立つという。事件などに巻き込まれる前に不明者を見つけ出すという強い使命感で、発見と保護に心血を注ぐ同係。地道な作業を重ね、県警の活動を下支えしている。

■事案を一体的に対処

 県警では今春の組織改編で児童虐待対策室を人身安全対策課に移管し、人身安全対策室を新設した。それまで児童虐待事案は少年課が、それ以外を人身安全対策課が所管していたが、それぞれの事案が相互に密接に関係している場合が多く、全事案に一体的に対処するため。人身安全対策課では、引き継ぎや報告を漏れなく行ったり、県をまたぐ調整も円滑に進めるため、行方不明者発見捜査にたけた捜査員を司令塔として24時間置くなど体制を強化している。

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