大切な日々、笑顔で輝いて すい臓がん患者の撮影会運営、県内から2人が参画

ヘアメークを担当した小林いず美さん

 貸衣装業を営む東根市の矢口匡彦(まさひこ)さん(49)と山形市のヘアメークアーティスト小林いず美さん(51)が、闘病中のすい臓がん患者による撮影会の運営に参画している。矢口さんは衣装を無償貸与し、小林さんはメークを担当。「家族や仲間と思い出をつくりたい」などと前を向く患者の姿をプロカメラマンが収めている。2人は「一日一日を大切に過ごす人たちを輝かせたい」と語る。

 撮影会は、宮城県を中心に活動する患者の会「すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロンぶどうの木」(浜端(はまばた)光恵代表)が企画した。すい臓がんは特に治療が難しいとされる。落ち込む患者もおり、同会は悩みを分かち合い、支え合っている。撮影会は「何か特別なことを」と2021年に初めて実施された。2回目は今年5月下旬に仙台市で開かれ、本県の患者を含む50~70代の夫婦6組が参加した。

 第1回撮影会に携わった小林さんは今回、「せっかくなら華やかなドレスやタキシードを着よう」と発案した。仕事上で付き合いのある矢口さんに相談した。矢口さんは快諾して衣装を無償で貸し出し、現場にも駆け付けた。

 「ドレスはコミュニケーションを生み、着ると主役になれる。家族への愛情も自然に表現できる」と矢口さん。衣装を着た患者の表情は明るく、控室はにぎやかになったといい「おでこをくっつけ合う夫婦や気持ちが軽くなったと言う人もいて、ドレスの持つ力を感じた」と話した。

 前回に続き、化粧や髪のセットに携わった小林さんは、抗がん剤の副作用による肌のくすみを目立たなくし、必要な人はウィッグで整えた。「病気を抱えていてもメークの力でポジティブになっていく。喜ぶ本人を見て家族も幸せそうだった」と振り返った。

 背筋を伸ばし、ファインダーの前でポーズを取る姿は、俳優のようだったという。浜端代表(53)=宮城県塩釜市=は「キャンサーギフト(がんからの贈り物)という言葉は嫌いだけど、これはご褒美かな」と語った。

 撮影した写真は9月30日から2日間、仙台市の地下鉄東西線「国際センター駅」1階で展示される予定。

撮影会に無償で貸し出したドレスを手にする矢口匡彦さん

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