〈世界ジオ認定・変わりゆく手取川〉ホタル10分の1 白山・山島で調査

「やしこの水辺」で開かれた観察会。今年は飛び交うホタルがわずかだった=17日、白山市八束穂

  ●ピーク時1370匹→今年143匹

 手取川扇状地の中央に位置する白山市山島地区で、ホタルの数が減少傾向にある。今年の確認数は143匹で、北國新聞社の手取川環境総合調査団が地元保護団体への聞き取り調査などを行ったところ、ピークだった2010年の約10分の1にとどまった。農業用水の停水や増加する照明設備の影響とみられ、専門家は現代の農業や生活と両立できる保護活動の重要性を指摘している。

 手取川からの農業用水が張り巡らされた山島地区は、古くからゲンジボタルの生息地として知られる。02年に結成された「山島ほたるの会」を中心に保護に取り組んでおり、07年からは6月下旬の決まった日に各町会で一斉調査を実施し、ホタルの数を集計している。

 手取川調査団昆虫グループ長の中村浩二金大名誉教授が13町会ごとの集計をまとめた。総数は10年の1370匹をピークに減少し、手取川で大規模な濁水が発生した15年に330匹、翌16年には212匹まで減った。昨年は462匹まで回復したが、今年は17日に調査したところ、わずか143匹だった。

  ●用水停止が響く?

 全体的に減少傾向にあることについて、会員らは停水の影響を口にする。近年は台風被害などによる灌漑設備の補修工事が多く、水の止まる期間が1カ月に及ぶこともあるという。

 中村名誉教授によると、ホタルの幼虫は夏に川べりの土中でふ化した後、水の中で越冬する。その期間に水がなくなると死滅する可能性が高くなる。防犯の観点から街灯が増えていることも、ホタルの生息環境面ではマイナスとみられる。

 ただ、会の辻道一男会長はこれらについて「米作りや地域の安全を守るためには絶対必要なこと」と理解を示し、「いずれの影響も受けないような工夫をしたいが難しい」と語った。

 中村名誉教授は「扇状地のホタルは白山、手取川の水の恵みであり、世界ジオパークの重要な要素だ」と強調。自然災害が多発するなど生活環境が変化する中、ホタル保護の新たなあり方について「考えを出し合う時期に来ている」と指摘する。

 その上で、生息エリアだけ水を流し続ける方策や、停水に影響されない小水路での繁殖の検討を求めた。

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