〈世界ジオ認定・変わりゆく手取川〉 今秋はクマ少ない? 白山麓のブナの実「並作」

ブナの実の付き具合を確認する調査団員=白山市白峰

 クマの餌となるブナの実が今秋、白山麓では「並作」程度と見込まれることが15日、北國新聞社の手取川環境総合調査団による着果調査で分かった。凶作の年に比べ、冬眠前に餌を求めて人里に出没するケースは少なくなるとみられるが、近年は市街地近くの山林にすみ着く個体もおり、専門家は「人家や果樹にクマを近づけない対策が必要」としている。

 ブナの豊凶調査は樹木・植物グループと動物グループが昨年に続いて合同実施した。白山市の白峰から鶴来の手取川流域10カ所で、実の付き具合を確かめた。

 1カ所につきブナの木20本を調べた結果、豊作・大豊作が5カ所、並作が2カ所、凶作・大凶作が3カ所となり、平均で並作と評価された。県が4月に白山市や金沢市、小松市などで行った開花調査でも同様の予想がされている。

 熟す前に落ちてしまう実も一定数あり、評価が下がることも想定されるが、植物グループ長の小谷二郎県林業試験場森林環境部長は「現時点で極端な凶作にはならないとみられる」と話した。

 ブナの実はクマの大好物で、冬眠を控えたクマが大量に摂取する。不作の年は餌を探して山から人里近くに出てくるクマが増える傾向がある。県のまとめによると、大凶作だった2020年は1年間に県全域で869件の目撃情報があり、そのうち秋(9~11月)の目撃が643件を占めた。

 並作だった17、18年の秋はそれぞれ39件と30件、大豊作の21年秋は34件で、並作以上の年は出没が少ない。昨年秋は凶作で大量出没が懸念されたが、代わりの餌となるミズナラやコナラが豊作だったため、31件にとどまった。

 ただ、最近は市街地そばの荒廃した里山に定着したクマが増えたとされる。こうした個体は時期に関係なく出没するため、小谷部長と動物グループ長の野﨑英吉県哺乳類研究会代表は「ブナの出来がよくても安心できない」と強調。生ごみ管理の徹底や不要な果樹の伐採など、基本的な対策を求めた。

 県によると、今年のクマの目撃件数は5月末時点で38件。昨年の同じ時期より46件少なくなっている。

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