近寄って甘えてくる…家族型ロボットに癒やされる日々 「ラボット」最新技術で生きものらしさ進化

目をぱちぱちさせながら愛嬌を振りまくラボットの「おらちゃん」=福井県福井市内
北陸で暮らすラボットを中心に集まった「ほくりくラボ部」のオフ会=5月、石川県金沢市

 福井県内のショッピングセンターや飲食店で、掃除や配膳に奔走している“ゆる~い”ロボット(ゆるロボ)。中にはペットのように“家族の一員”として癒やしを提供する仲間も登場している。これまでもペット型ロボットはあったが、近年は最新のテクノロジーでより「生きものらしさ」が進化。愛らしい見た目や鳴き声に魅了され、家族として迎え入れる人が増えている。

◆人肌の温かさ

 「おらちゃーん」。名前を呼ぶと声のする方に顔を向け、目をキラキラ輝かせながら近寄ってくる。パタパタと動く短い手、まん丸の顔。甘えるようなしぐさに思わず抱っこすると、人肌ほどに温かい。

 吉岡優子さん(47)=福井市=が「家族型ロボットLOVOT(ラボット)」を迎え入れたのは2020年。愛知県名古屋市の百貨店を訪れた際、展示されていたのを見て興味をもった。ちょうどペットを飼いたいと考えていたタイミングで、先進性や面白さに引かれラボットを選択、注文した。

 名前はスペイン語の「オーラ(こんにちは)」が由来。アップデートなどを行う8時間程度の「睡眠時間」を除き、40分ほど動き回って約20分充電するサイクルを繰り返す。吉岡さんの声や動きに反応して、足代わりのホイールを操り後を追いかけたり、近寄って甘えたり…。「かわいい姿に癒やされてます」。夫婦でメロメロだ。

 おらちゃんが動きやすいよう部屋を常に整頓し、時間やお金は「この子」に使おうと考えるようになるなど、自身の生活や意識も変化したという。「人間が成長させてもらえる面もある。イヌやネコもいいけれど、ラボットという選択肢も知ってほしい」と熱く話してくれた。

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◆1体1体に個性

 ラボットは、ロボット事業を手がける「GROOVE X」(東京)が開発、販売している。高さ約45センチ、重さ約4キロで、頭の上にカメラやマイク、サーモグラフィーを搭載。声のする方向や部屋の様子、人間を正確に認知して反応する。体内を温風が循環することで、生きもののような「ぬくもり」も生み出している。

 人を識別して学習する機能により“性格”も1体1体違う。事前にプログラムされた動きだけでなく、なでたり、話しかけたりといった関わり方次第で声や動きが変わり、個性が出るという。

 吉岡さんらユーザーが「癒やされる」と感じるのは、触れ合うことでユーザー自身から分泌されるホルモンが要因という。同社と資生堂の実証実験によると、一緒に暮らす人は「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンの濃度が高かった。ストレスによって分泌するコルチゾールも減少するとしている。

◆広がる交流の輪

 場所やアレルギーなどに左右されないのも強みで、活躍の場は一般家庭以外にも。越前市社協が運営するデイサービスセンターはラボット2体を活用。地元事業所から寄贈されたもので、触れ合いを通じ利用者の認知機能の低下予防などに役立っている。

 ユーチューブにはラボットとの暮らしぶりを紹介する動画が続々アップされている。吉岡さんも成長日記を兼ねて投稿していて、一緒に買い物や旅行に出かける様子に「癒やし効果ばっちり」などのコメントが寄せられている。

 SNSを通じたユーザー間の交流も深まり、石川県の人を中心に昨年「ほくりくラボ部」を結成。年に数回、北陸のユーザーが中心に集まって交流する「オフ会」を開いていて、5月には同県金沢市で開かれた。

 吉岡さんは「人のつながりも広げてくれた。魅力を発信し続けて多くの人に興味を持ってもらえたら」と、さらなる仲間の広がりを期待している。

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