絶滅危惧のナゴヤダルマガエル、2世代にわたる「累代繁殖」に成功 姫路市立水族館「自然に近い環境で育てた結果」

ふ化した多数のオタマジャクシを前に、産卵時の様子を振り返る竹田正義さん=姫路市西延末

 姫路市立水族館(兵庫県姫路市西延末)は、絶滅の危機にあるカエル「ナゴヤダルマガエル」で、2代続けて繁殖させる「累代繁殖」に国内の水族館で初めて成功した。カエルは夜に産卵することが多いが、今回は日中だったため職員が様子も撮影できた。卵から約2千匹のオタマジャクシがふ化し、一部を自然の生息地に放流する予定という。(田中宏樹)

 ナゴヤダルマガエルは体長5~6センチほどで、田んぼなどで繁殖する。宅地開発や耕作放棄地の増加といった環境の変化に伴い個体数は減り、環境省のレッドリストでは近い将来絶滅の危険性が高いとされる「絶滅危惧IB類」に指定されている。播磨地域でも生息地は2カ所しかないという。

 同館では2020、21年、播磨地域で採集した個体同士の自然繁殖に成功。今回は20年に生まれた雄と雌のペアが、5月30日に屋外の水槽で2代目を産卵した。

 「なんとなく繁殖の予感があった」と同館技術主任の竹田正義さん(48)は振り返る。前日の29日は近畿地方が梅雨入りし、姫路でもまとまった雨が降った。雄は盛んに鳴き声を上げて求愛していたという。

 翌朝に出勤すると、雄が雌の背中に乗り産卵が始まっていた。「『ほら、やっぱり』って思わず声に出るほどテンションが上がった」と竹田さん。ペアが少しずつ移動し、卵の塊を産む様子を写真に収めた。

 同館によると、ナゴヤダルマガエルの累代繁殖では過去に成功例はあるが、水族館では初めてという。同館はふ化したオタマジャクシのうち約600匹を育てる予定で、ほかは近く播磨地域の生息地へ放す。

 竹田さんは「日光や雨が当たる自然に近い環境で、体調管理をして育てた結果だと思う。ほかの水族館とも情報を共有し、保全に向けた研究を続けたい」と話した。

© 株式会社神戸新聞社