新明和が水素ビジネス参入、札幌のベンチャーと提携 貯蔵・輸送に利点、液化技術を実用化へ

フレイン・エナジー社が試作した脱水素装置(新明和工業提供)

 新明和工業(兵庫県宝塚市)は水素ビジネスに参入する。北海道のベンチャー企業と業務提携し、水素を液体に変換したり、液体から水素を取り出して供給したりする装置を実用化する。液体は常温・常圧で輸送、貯蔵できるため扱いやすく、既存のインフラを利用できる利点がある。水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出さない次世代燃料として期待されており、2025年の商品化を目指す。(塩津あかね)

 新明和が提携したのは、フレイン・エナジー(札幌市)。水素を製造・貯蔵する装置を手がけるベンチャーで、水素をトルエンと反応させて「メチルシクロヘキサン(MCH)」という液体に変化させたり、このMCHからトルエンを抽出して水素に戻したりする触媒技術を持つ。

 水素は気体のままでは体積が大きく輸送が難しいため、高圧をかけて圧縮したり、低温で液化水素にしたりして輸送・貯蔵している。いずれもインフラ整備が必要で、高コストになるという。これに対し、MCHは常温・常圧で輸送できるのが利点。消防法上はガソリンと同じ扱いのため、タンクローリーで運搬でき、ガソリンスタンドでの貯蔵も可能という。

 両社はフ社の技術と新明和の量産技術を基に「水素添加装置」と、水素を取り出す「脱水素装置」を開発する。来年からは再生可能エネルギーを使って発生させた水素をMCHにして貯蔵、輸送、脱水素、発電という水素サプライチェーン(供給網)の実証実験を開始する。25年に装置の商品化、30年に売上高40億円を目指す。将来的には両社の資本提携も視野に入れている。

 フ社は小型の発電装置も開発しており、トラックなど新明和が手がける製品に搭載できる小型の脱水素装置の開発を目指す。MCHは水素を取り出す際に300度以上に加熱する必要があるが、車載用装置ならエンジンの熱を利用することができるという。

 新明和の担当者は「水素を貯蔵・輸送するさまざまな技術には利点と欠点があるが、サプライチェーン全体ではエネルギーの使用量に差はない。扱いやすいMCHは分がある」とみている。

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